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デジタル版・新聞

インタビュー

財団法人天風会・理事長 尾身幸次さん

NPO法人STSフォーラム(科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム)理事長

前自民党幹事長代理

財務大臣歴任

 

 

皆様は中村天風という人物をこ存知でしょうか? 天風氏は人間に本来備わっている生命の力を充実させ、真の健康 法としで心身統一法』を確立した人物です。1919年に統一医学会を創設し、1940年に「天風会」と改称され、長年 に渡って全国各地で講習会や修練会を行ってきました。その天風会の講習会が先日ハワイで初めて開催されました。 尾身幸次氏は通産省で26年、国会議員を26年務め、科学技術庁長官、財務大臣等を歴任し、現在は天風会の理事長 を務めるかたわらSTSフォーラムなどでも精力的に活動を行っています。今回は天風会の教義をはじめ人類の未来について貴重なお話しを伺いました。

ライター:相原光

 

 

天風先生の教えを世界中に広めたい

積極人生を築き上げる!天風会の「心身統一法」とは?

私は通産省で働いていた28歳の時に突然結核で倒れ、天風先生を紹介して頂き、 7年間直接本人から教えて頂きました。医 者が完治にはl年半かかると言った結核を 9ヶ月で治して、以来50年間ほとんど医者 にはかかっておりません。

 

天風会で今は理事を務めており、天風先生が残してくれた この方法を日本中で教えています。いずれアメリカや世界にこの方法を広めたいと思 っておりまして、今回初めての海外講演とし てハワイに参りました。今日は英語で講演 をする予定で、英語での講演は初めてなの でやや緊張しています。

 

ハワイには天風会 のことを知っている方がものすごく多くて 驚きました。この機会を生かして、これから は英語で講演できる体勢を天風会で整え ていきたいと思っています。ハワイでの講演 は世界への第一歩です。

 

天風先生の教えの一番のポイントは 「人 間の心の持ち方を積極的にすること」です。 病気になっても病気を気にしない、運命が逆風であってもその運命に打ち勝つように 心を強くする。それによって人間が持って いる潜在的な力(潜勢カ ・ リザーブド ・ パワー)を100%発揮する。

 

その力によって病を 克服したり運命を切り開いたりする。それが中村天風の教えの一番の根幹です。 天風会という会はただそこまでを教えて いるわけではなく、どうやったら病を気にし ないようになるか、運命を乗り越えるため にはどうやって心を強くすれば良いのか、その方法を教えている会です。

 

人間の生命 は心と体がくっついたものですから、もちろん肉体に関することも教えていますが、基本は「心の持ち方をどうやったら強くすることができるか」ということを主としています。 心を強くする方法と言っても、実際に実行しないと効果はありません。

 

しかし、誰でも実行できる簡単な方法を実行するとも のすこく効果がある。「How to control mind」を教えているところが、他の宗教や修行法とまったく違うところです。 例えば、 「右の頬を打たれたら左の頬を 出せ」という言葉がありますが、問題は 「どうやったら左の頬を出せるようになるか」と いうその気持ちの持ち方、コントロールの 仕方を教えているわけです。もっと簡単に言うと、所謂 「消極人間」から 「積極人間」 になる方法を教えています。

 

病気になった時に病気のことばかり気に していたら、病気は良くならない。 「病気の 時にどうやったら病気を気にしなくなれるか」という方法を教えているのは天風会だけだと思います。そこが重要な点です。

 

心のコントロールというものは目には見えないものです。心の持ち方というのは体 の使い方よりも大事であり、心の強さを確 立することによって運命を切り開き病を克服することができる。心身統ー法とは、偉い 人をより偉くする方法というよりは、普通の 人をしっかりさせることができる方法です。

 

ただし実行しないと駄目。これは具体的な 方法です。実行しやすいのは、病気の人や仕事などで運命が逆風にある人です。なぜなら 実行しなければ生きられないから。どこもな んともない人は困っていないから実行しづらい。

 

ところが、人間の運命や健康はいつ何が起こるか分かりませんから、その時になって から実行しても間に合わない。平素から心と体の力を強くしておけば病気にもならずに充 実した人生を生きられます。俗に言う「良いことを言う」というものとはまったく異なりま す。

 

「なかなか良いことをいっていて勉強にな ったね」というものではない。 「How to say」ではなく「How to do」つまり 「いかに行動す べきか」を教えているのです。言われたことを 実行しない人には効果はありません。 ですからものすこく厳しいのです。

 

厳しい というのは脅かしているわけではなく、それが人生の基本なのです。 天風先生の弟子は延べ100万人と言われていますが会員登録をしているのは 3000人くらいです。講演会にいらした方な どはもちろん何万人もいます。年齢層は若 い方からお年寄りまでと幅広く参加されて います。

 

本部は東京にあり、大阪・ 京都 ・ 名古屋 ・ 神戸 ・ 広島 ・岡山 ・福岡•北海道 ・ 仙台 ・沖縄と全国に支部があります。ハワイの 方からも支部を作ってほしいという要望を 受けています。

 

 

天風先生との出会い

私の天風先生との出会いは28歳の時で した。そこまでは順風満帆とも言える人生 を送ってきたのに、突然結核で倒れてしま った。当時は死ぬかもしれないという病で した。

 

当時は通産省の高級官僚でしたから、病気が例え治ったとしても病気で脱落 してしまったら人生終わりです。そんな時に 漢方医の先生に 「あなたにぴったりのところがあるから行ってみなさい」と言われて 天風先生を紹介して頂きました。 その頃は新聞やテレビで宣伝をまったくしていなかったのです。

 

天風先生の教えで病気を治した人や運命を切り開いた人が、「喜びのおすそわけ」として天風会を紹介す るというシステムでした。ですから紹介者の いない会員はいなかった。戦前は原敬総理大臣や東郷平八郎 ・ 松下幸之助・ 稲盛和夫といった政財界の有力者や華族の方な どが多かったですね。

 

最近はインターネットや本もありますから簡単に情報が手に入りますが、昔は本も天風会員しか購入することができなかったのです。 天風先生は溌刺颯爽とした素晴らしい 人物でした。居合いの達人で柔道も剣道も強い。テレパ シーも使える人です。

 

しかし、 天風会というのは天風先生の教えが有効かどうかであって、先生がどんな人物だっ たかというのはポイントではありません。先生の教えが今我々の人生を築き上げるの にどれだけキチッとしているかどうかです。 私は天風先生に初めて会った時に「この 人に私の命を預けよう」と決心しました。

 

それは「言われたことは全部実行する」という意味です。なぜかというと病気で切羽詰まつ ていたから、他に活路がなかった。言ってい ることが正しいかどうかも最初は分かりま せん。効果があるかどうかも分からなかった けれど、それ以外に生きる道がなかった。仮 にあったとしても知りませんでしたから、こ の方法に賭けるしかありませんでした。

 

入会後は毎月5日間、夕方6時から8時ま での心身統ー法講習会に出席していまし た。これは天風先生がこ存命中の7年間休むことなく皆勤しました。夏は心身統ー法 をさまざまな形で実際に心と体を使って学ぶ「夏季修練会」に参加しました。呼吸法や体操などを学ぶのですが、現在は私が指導 しています。

 

そうやって天風哲学の実践に励み、9ヶ月後に病院に行ったところ 「あれ、治ってま すね」と医者は大変驚きました。 「でも尾身 さんは結核ですから今後も無理をしてはい けません。絶対無理をしない生活をしてください。3ヶ月に1度は検査に来てください」 と言われて以来1度も検査に行っていません。元気なので行く必要がないのです。健康 診断も受けていません。

 

しかし、自分で自分 の心と体を健全に保つこと、つまり天風会 で教えていることは毎日きちんとやっていま す。人間の持っている自然治癒力を最大限 に発揮させることが非常に重要なのです。 これは神がかっているわけではありません。例えば、がんの患者が手術をしなくても 治るということではありません。

 

手術を受けたあとの気持ちの問題、病気に負けない という気持ちが大事なのです。もう駄目だと思わずに 「命は助かったのだから良かっ た」と思うことが大切なのです。心の状態を 清く ・ 尊く ・ 強く ・正しい心、明るくほがらかで生き生きと勇ましい心にすると、宇宙からくるエネルギーが自分の心と体に入って 来て活性化されるという哲学なのです。

 

物 事に思い悩む必要はなく、心の状態を積極的にすることに全力を尽くせば良い。 結核が治ってからも通産省で働き、その 後26年間国会議員を務め、大臣を3回歴 任しました。通産省でもたくさんの方に天 風先生の教えを紹介しました。役所という のは激務ですから、それをやり通せたのも心身統一法のおかげです。病気のときは病気を気にしないようになる。

 

仕事の時は、判断力や断行力がものすごく強くなりま す。仕事で行き詰まった時に、どうすれば良 いかが心に浮かぶのです。そのおかげであらゆる局面を切り抜けてきました。 国会議員になったのも天風教義からのインスピレーションだったと自分では思ってい ます。私はもともと裕福な家系の出身ではありませんでしたから、天風会に入らなければ 政治家にはならなかったと思います。

 

 

心身統一法を次の世代に伝えていく現在の天風会の活動

 

私が天風会の教えを実行する のは、毎日20分くらいです。これは 深山幽谷で瞑想に耽らなければ完成できないというも のではない。普通の人が普通に生活しながら心と体を鍛えることができる方法です。しかし簡単だから手を抜きがちになる。

 

会社に勤めている方は、 これを実践していると仕事がものすごく順調に行くようになります。そうすると忙しくなってしまう。 「忙しいので講演会に行けない」という人が時々いますが、それは分かっていないのです。

 

私の場合はこの方法で命を保てたわけですから休むということはありませんでし たが、50年前に一緒に講習会に出席して いた人の中には 「最近忙しくて天風会に行けないんだよ」という方が何人かいました。 そういう人たちが70歳を過ぎて、また参加 しています。この40年間のブランクをどうするのかと思いますよね(笑)。

 

天風会に来 ていなかった時は実践もしていません。 「講習会に出席する」というのが会員の条件でもあるのです。それに心がどんどん緩んでし まうので、元の木阿弥に戻ってしまいます。 心の鍛え方というのは一生ものですから、分かったから終わりではない。分かって・実 践して ・結果を出して・続けていかなければ ならない。

 

お金持ちでもなんでも条件は平 等ですから、会社の社長だからと言ってサ ポってよいことにはなりません。 今は月に3日間講習会があります。約3日で1サイクルで、それを全部聞かないと分からないようになっています。それから、1日で一応の所まで仕上げる特別コースが月 に1回。

 

東京は毎日曜日にもう少し実践的 な講習会があり、各支部でも同じような講習会を開いています。だから教会に行って いるのと同じようなものですね。長く続けて いる人が多いです。夏の 「夏季修練会」が最も大きい集まりで、5日間で実践的なことを 学びます。

 

これは本当に目からうろこで、最高に楽しいですから。本部の修練会はとに かくレベルが違います。一から十まで私がすべて指導しています。天風先生がご存命 だった頃は9日間で行っていたのですが、5日間でやるのは少し難しいので、事前に予 備修練会を2日ほど行っています。これは 毎年8月に開催しておりまして、今年は 400人ほど参加しました。

 

修練会は1回出れば終わりというわけではなく、毎年参加することに意義がありますので、是非参加 して頂きたいですね。 今生きている人で中村天風先生を直接 知っている人はそれほどいませんが、本もありますし、 「心身統一法は我々が引き継いで 次の世代に伝えていく」と思っております。

 

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