美味しいマグロを求めて Part4
さて、これまで「マグロの目利き」についてお話ししてきました。前回はマグロの身に特にみられる“サシ”“シミ”そして“身割れ”などの問題について述べました。
それでは、これで大丈夫かと言えばそうでもなく、やはりもう一つ気になるのは、マグロの“色”でしょうか! マグロの赤い色は、見ても美しく食欲も誘います。美味しいマグロの魅力は、やはり赤い色にありますね。スーパーや、魚屋さんのショーケースにあるマグロに目を凝らして見ているのは、マグロの赤い色でしょうか。たしかに、他の魚の中でも、マグロの赤色はひときわ冴えている時があります。
ところで、マグロの身はなぜ赤いのでしょうか? 読者のみなさんは、すでにご存知のように、マグロはいつも泳ぎ回っています。ここでまた一つ、なぜいつも休みなく泳いでいなければならないのでしょう。
それはマグロは水中からの酸素をたくさん必要としているからです。そのために口を大きく開け前へと泳ぎ、たくさんの海水を口に吸い込んで、エラから酸素を体内に取り寄せ、水は外へ出しています。こうして吸収された酸素は、体のすみずみまで運ばれているのですが、それが血液色素のタンパク質である“ヘモグロビン”“”ミオグロビン”なのです。この量が多いのでマグロの身は赤くなるのです。
マグロだけではなく、カツオやブリ、サバなどの泳ぎ回る魚たちは、みな赤色の身になっていますね。それに比べて、白身の魚というと、岩礁や砂場に棲みついて余り動かず、じっとしているかゆっくり泳ぐ程度なのです。なので、赤身の魚に比べて酸素量はそれほど必要としません。それでヘモグロビンもミオグロビンも少なく、ヒラメやタイなどのような魚は身が白くなります。
そこで、赤身の魚でどうしても気になるのが、身のきれいな赤い色が黒ずんだ色に変わってしまうことです。とくに、マグロはたくさんの血液が含まれているので、変色を早めてしまうわけです。こうした変色は、鉄の包丁が錆びるのと同じ現象なので、包丁を濡れたままにしておけば、鉄分が酸化されて赤いサビとなります。さらに、放置しておけば腐敗も早まります。マグロも同じですね。
マグロの身に付着している水や、触れる空気(酸素)によって酸化作用が起こり、この状態で時間を経過させてしまえば、せっかくの赤色はどんどん黒ずんで行きます。さらに、時間が過ぎれば、劣化、腐敗も始まっていきます。
マグロは大海を勢いよく泳ぎ回る魚です。赤色の美しい身をもっていて栄養も豊富ですが、しかし、血が多いゆえに処理も保管も、他の魚と比べてとても難しいのです。