寿司神さまからの使者
日曜日の朝7時過ぎ、「痛っ」という夫の声が外から聞こえてきた。様子を見に行くと「新米に噛まれた」という。
新米というのは隣の家の猫のことである。シャム猫の入った雑種で、我が家に年中遊びに来る。というか、うちの敷地は新米のナワバリなのだろう。小柄な外見とは裏腹に、野を駆け巡る、野性味あふれる外猫なのだ。身体はデカいが内弁慶の我家の猫たちとは対照的。
朝イチで外に出たら新米がやってきたのでナデていたら、たわむれに噛まれたらしい。もちろん、新米には敵意などない。単に喜んでゴロゴロと喉を鳴らしながら遊んでいただけ。しかし甘噛みになってなかったんですね。
夫の右手首には4つの小さな穴ができていた。カプッと噛んだ様子が目に浮かぶ。夫は傷口を洗って消毒。血はほとんど出ていない。しかしなんとなく嫌な予感がした。
数時間後、傷が痛み始めた。手首も腫れてきている。これは医者に行ったほうが良いのでは? 夫は素直にアージェントケアに向かった。
帰って来たときには、手首は腫れ上がっていた。運転もつらかったらしい。「動物に噛まれたらすぐに医者に行け」と言われたそうな。感染予防の注射や抗生物質を投与され、痛み止めも飲んだというのに、痛みはおさまるどころか加速している様子。指一本動かすこともできないくらいひどい。
晩餐のときには箸さえ持つことができず。フォークでうどんを食す姿が悲哀をかもし出していた。「どこが痛みのピークなんやろ」。猫に噛まれてこれほどの激痛を味わったのは初めてとのこと。薬が劇的に効いても、翌日寿司を作るのはどう考えても不可能。月曜日は臨時休業となった。
結局、そのまま木曜日まで休むことになった。月曜日は少し痛みがおさまったものの、手が動かせない。試しに野菜を切ってみたところ、かなりの難渋ぶり。休みとはいえ、趣味のギターを奏でることも無理。
「ギター弾きじゃなくて良かったね」
「料理人でもけっこう大変やで」
私はといえば、突然の5連休に狂喜乱舞していたのは言うまでもない。やったー! これは寿司神様からの「休め」っていうメッセージだ。新米は神の使いだったんだね。
うちの猫に噛まれたというか、たまたま牙が突き刺さってしまったときも、けっこう腫れたけど、ここまでじゃなかったんだよね。たまたま深いところまで菌が入っちゃったんだろうなあ。
というわけで、動物に噛まれたときは、すみやかに医師の診断を受けましょう。
そして新米よ、「甘噛み」を覚えるのだ!
No.202
相原光(アイハラヒカル)
フリーランスライター&翻訳
群馬県出身、早稲田大学卒業。2008年結婚してハワイに移住。夫は寿司シェフ。2012年4月双子猫パンとマーチを連れてハワイ島に引越。8月に玄米寿司とムスビの持ち帰り店「DRAGON KITCHEN」を夫婦でヒロにオープン。現在ライター兼寿司屋のお手伝いとして活動中。姉は漫画家の花福こざる。
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大変な出来事でした(T . T)
芸能人は歯が命、寿司職人は手が命だ!
早く良くなりますように祈ってます!