デリバリー業界の謎の戦略
妙なオーダーの電話がきたのは、確か5月の始めだったと思う。
私は夫婦でテイクアウトのSUSHI屋を営んでおり、そのころはロックダウンの影響でかなり静かな日々が続いていた。電話でオーダーが入るのは珍しいことではない。ロックダウン後は、電話オーダーが目に見えて増えている。この状況だったら、電話でオーダーしたいもんね。いつものように電話をとると、お客さんは言った。「○○○○ですけど、△△△△さんのオーダーをお願いします」。
最初のところが聞き取れなかったが、何か会社の名前みたい。内容はふつうのオーダーだし、まあいっか。私はそのままオーダーを取った。合計金額と所要時間も聞かれた。よくわからないまま夫に報告すると、夫はすぐに状況を理解したようだった。
「たぶんデリバリー会社やな」。私は知らなかったが、○○○○社というのはデリバリー業者のひとつらしい。ハワイ島にもついに進出してきたのかな。でも、ちょっと待って、うちって契約してないんじゃない? どうなっているのやらさっぱりわからないまま、ほどなくピックアップの人がやってきた。
これはいったいどういうことなのか? 我々のお店は、某社のサイトに掲載されていたのである。どうもこれが戦略らしい。まず勝手にレストランをリストに載せると、お客さんが注文を入れるようになる。無料で新規のお客さんを送ってくれるので、レストランはありがたい。レストラン側がある程度恩恵を受けたところで、改めて契約を結ぶ。という流れ。
なるほどねえ、いろいろ考えるもんだねえ。一応、この会社のサイトを確認してみたところ、我々はびっくりギョーテンした。うちのお店の名前が、まったく違う名前になっていたのだ! 「ドラゴン・キッチン」が、「ドラゴン・ファイヤー・シーフードガーデン(仮名)」になっている。
それだけではない。いったいどこから見つけてきたメニューなのか、値段も間違っている。これじゃお客さんも混乱してしまう。夫は某社に電話し、その旨を伝えた。
そこで、さらなる衝撃が我々を襲った。「名前やメニューの変更はできない」というのである。なぜならば、うちは契約していないから。「変更してほしかったらまず契約しろ」とのことであった。えーそんなやり方ってあり?!
いやあ、私はホンマにびっくらしました。これで契約する人っているのかなあ?
我々は契約を辞退し、お店の名前をリストから外してもらうことにした。すでに地元のデリバリー会社と契約しているので、これ以上デリバリー会社を増やす必要もないし。
ここからが更によく分からないのだが、その後もうちのお店は掲載されている。店の名前は相変わらずそのままだけど、メニューの方は徐々に直されている。しかし先方からは音沙汰ナッシング。
ううむ、どうしたものか? 教えておくれよヒヨリボー!
No.201
相原光(アイハラヒカル)
フリーランスライター&翻訳
群馬県出身、早稲田大学卒業。2008年結婚してハワイに移住。夫は寿司シェフ。2012年4月双子猫パンとマーチを連れてハワイ島に引越。8月に玄米寿司とムスビの持ち帰り店「DRAGON KITCHEN」を夫婦でヒロにオープン。現在ライター兼寿司屋のお手伝いとして活動中。姉は漫画家の花福こざる。
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