AIによるマグロの目利き
さて、“AIでマグロの目利き”と言っても、一般消費者の皆さんが、AI器具を使って目利きをするとかではなく、あくまでもマグロ業者さんが使うものですね。すなわち、消費者が店頭に並べらているマグロ切り身や刺し身を、アプリの“TUNA SCOPE・ツナスコープ”を使用して、マグロを買うといわけではありません。
“AIマグロ”と名を売って市場での差別化をすることで、“ブランド商品”として際出せたいのが売り手側の狙いとなります。販売のキャッチ・トークは、「長年の仲買人が身につけた“匠(たくみ)の技術”を、AIによるマグロ目利きの判定ができるようになった」と言うわけです。その「限定されたマグロが、皆様に届けられるようになりました」となるのですね。
こうなってくると、このAI判定されたマグロに、感動さえ覚えてしまいます。ましてや、日本の気仙沼港や清水港、焼津港だけではなく、海外の韓国、台湾、中国でも漁港で水揚げされるマグロの多くも日本へと輸入されてきます。そうなると現地でのマグロ判定の目利きの熟練者が必要なってきます。しかし、マグロ検品のために海外に出張させるとなると、今や“コロナの時代”でもありますので、そう簡単ではありませんし、また出張経費もかかります。
そこで、ONLINEで結んで、このAIでの検品をすれば、マグロの品質もデータベースで管理され、現地と日本側とのブレやズレがかなり少なくなるというわけです。
さらに、マグロ熟練者と言っても人間がやることですから、その日の時間帯や光のあんばい、その日の体調もあるでしょうし、本人の目で見て、触ってと一貫性を持って判定していくことはなかなか容易なことではありません。
また、熟練者と言っても一人ひとりによっても、目利きに癖や見どころに違いが出ることもあります。そこで開発者側は、「AIの技術の活用で、安定したマグロを届けられるようになります」とアピールできるわけです。さらに、実際に諸経費削減にもなりますしね。
開発業者は、現状ではTUNA SCOPEの機種や、システムの販売は考えていないようです。すなわち、マグロ業者が扱うマグロで「TUNA SCOPE」で判定したマグロを「AIマグロ」として、日本市場に紹介しています。今のところは、回転寿司チェーンの“くら寿司”さんで、先ずは試験的に挑戦してみようということになっています。
特に水産業界は、若手の人材不足に苦しんでいます。ましてや、2035年には、日本人口の約三分の一が高齢者となり、2055年には日本総人口は1億人を切ってしまうだろうと言われています。このままでは、国内の経済すら成り立たなくなってしまいます。やはり、どこかでAIを活用していかなかればならないのでしょう。