2020年の日本最大のイベントは、何と言ってもオリンピック、パラリンピックです。前回64年の東京五輪以来、実に56年ぶりに日本で開催される夏季五輪。お正月気分が抜けると、日本のテレビでは五輪選手やパラ選手を起用したCMが急に増え、開催が近づいてくるのを実感します。
パラ選手団団長になった“彼”
…と先日、新聞のある小さな記事が目に止まりました。今夏のパラリンピックの選手団団長に、河合純一さん(44歳)が選ばれたと。河合さんは視覚障害のある元競泳選手で、過去パラリンピックで5個の金メダルを獲得したパラアスリートの先駆者です。その河合さんと私には、私だけが知る、小さな「接点」が実はあるのです。
今から四半世紀前の20歳前後のこと。大学内の温水プールで、授業の合間に私は河合さんの隣のレーンでしばしば泳いでいたのです。最初に驚いたのはそのスピード。勉強の息抜きで泳いでいる私と違い、隣の男子学生は綺麗なフォームで流れるように泳いでいき、その早さに圧倒されました。そして、さらに衝撃を受けたのはプールを上がってから! 水中では全く気付かなかったのですが、何と隣のレーンの彼は盲目のスイマーで、プールサイドではスタッフに更衣室まで先導されて歩いているではないですか!
四半世紀前のパラアスリート
25年以上前の日本では、まだハンディキャップのある学生が、一般の大学に入学するのは珍しかった時代。その後も平日の午後にプールに行くと黙々と一人泳ぐ河合さんを見かけました。距離感も分からないはすなのに、水中でのターンは華麗の一言。そのうち学内の広報で、彼が私より1つ下の教育学部の学生で、パラリンピックを目指すアスリートであることを知りました。
大学卒業後は、故郷・静岡で教師になりながら、6回のパラリンピックに出場。金メダル5個を含む、21個のメダルを獲得しています。そして、今年1月にJPC(日本パラリンピック委員会)の委員長となり、夏のパラ選手団団長の大役です。夏季のパラリンピックで、選手出身者が団長になるのは初めてのこと。ちなみに前回リオ五輪の選手団の団長は元スピードスケート選手で国会議員の橋本聖子さん。選手団の団長は日本の「顔」ともいうべき立場で、20年前に日々プールで練習を重ねた彼が、パラアスリートとして切り開いてきた道の尊さを思わずにはいられません。
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開幕前の準備期間にも夢が
五輪終了後の8月25日に開幕するパラリンピックは、1月29日にチケットの二次抽選の募集が終了し20万人の応募があったそう。パラリンピックのチケットも激戦で、私も車いすラクビーなどの一次抽選に応募しましたが、残念ながら外れています。様々なアスリートの夢をのせたオリンピック、パラリンピック。開幕までの準備期間も、ワクワクがたくさん待っていそうです。
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竹下聖(たけしたひじり)
東京生まれ。大学卒業後、東京の某新聞社でスポーツ記者、広告営業として15年間勤務後、2012年〜2014年末まで約3年間ハワイに滞在。帰国後は2016年より、大手町のマスコミ系企業に勤務。趣味はヨガと銭湯巡り。夫と中学生の娘、トイプードルと都内在住。
(日刊サン 2020.2.8)