あけましておめでとうございます。昨年は拙文をお読みいただきありがとうございました。今年も引き続きお読みいただけますと幸いに存じます。
ギリシャ神話のクロノスをはじめとして世界にまします時を司る神々は、いずこでも公平に時を刻んでおられます。にも拘わらず、ジャネーの法則の如く年齢を重ねると時間の過ぎ去る速度が一段と早く感じられるようになります。気づくとまた新しい年が巡ってまいりました。今年が皆さまにとりましても、そして世界にとりましても穏やかな優しい年となりますこと心より願っております。
健やかに年齢を重ねるのは大半のヒトの願いでしょう。ヒトは長い年月をかけて寿命を延ばし続けてきましたが、樹木には到底かないません。世界で一番の長寿の木は樹齢8万年とも言われる米国ユタ州のポプラの群生(通称パンド)だそうです。日本で有名な長寿木は屋久島の縄文杉です。樹齢3000年とも7200年とも言われています。その近くには現在知られている日本最古参の大王杉もあります。
樹木の年齢幅は環境などによって確定しづらいのですが、世界には1000年を超える木々が必ずしも珍しくなく、日本ではそうした悠久の時を生きる樹木に神性を見出し大切に慈しみ保護してきたケースが多くあります。神社のご神木はその典型でしょう。
植物はエネルギーを光合成によって賄っています。植物は光によってエネルギー工場の役割を担う葉緑体でデンプンと酸素を作り出します。光合成を簡略化すれば、空気中にある二酸化炭素と水を利用し、デンプンを作る時に利用する酸素の余剰分を外に排出します。私たち地球に生きる動物達が呼吸に必要な酸素の多くは植物の余剰酸素で賄われているのです。
樹木の地球に果たす役割は膨大で、地球上の生命全てが植物無しに維持することができません。昨年の8月にマウイ島では大規模な山火事が起こり多くの人命が失われ、米国史上最悪の被害をハワイ在住の皆さまは経験なさいました。観光地であるラハイナの大部分が焼け野原となり、いまだに心の傷が癒えない方々も多くおられることと思います。けれど、生活の再建も徐々に進んでいると聞き及んでいます。2023年11月に日本でも著名な観光地である霧ヶ峰で180ヘクタールが森林火災のため焼け野原となりニッコウキスゲの群生地も4分の3ほどが焼けたそうですが、その焼け跡からもうキスゲの新芽が芽吹いているとのことです。
あまり手をかけていませんがそれでも我が家の庭の片隅で山茶花が今、紅色の花を見事に咲かせています。ヒトは樹木ほど逞しく生きることはできませんが、打たれ強く、媚びず、真っ直ぐに立つ樹木をお手本に悠久の歴史の狭間で僅かな、儚い時間でも心身共に健やかさを保つ努力をしてまいりたいものです。
神楽坂発 お身体へのお便り No.124
安田祥子 Akiko Yasuda
株式会社jast代表取締役会長
統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー
最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。
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