「木を切る」と夫が言い出したのは、2週間ほど前のことだった。
私はハワイ島・東部に住んでいる。1エーカー(約1220坪)の敷地に家が2軒という住宅地で、我が家の周囲は木々の生い茂った雑木林のようになっている。私も夫も都市生活が長かったので、緑あふれる環境というのは大変うれしいものでした。
そう、都会っ子の我々は知らなかったのです。「森は成長」するということを。
2015年8月にこの家に引っ越してきたときは、大家さんがブルドーザーで整地したあとだったので、裏の家も見えるくらいすっきりしていした。それから8年、気づいたときには遅すぎた。雑木林はとてつもない成長をとげていたのだ!
この森は、どんどん家に迫ってきている。一番近い木の枝は、軒下まであと5メートルくらい。縦への成長もすさまじく、10メートル越えの木が壁のように家を囲んでいる状態。しかも、家に向かって傾いている木も多い。このままでは、家が飲まれてしまう!
というわけで、倒れてきたら屋根を直撃する可能性の高い木をまず切ることに。とはいえ、大木を切り倒した経験もなければ道具もない。チェーンソーは壊れていて使用できない。あるのは小型の手斧のみ。
この木の直径は約30cm。成長が早い木というのは幹が柔らかいものだけど、ここまで育ってしまうとそれなりに硬い。切り倒すのは無理そうなので、切れ目を入れて自然に倒れるのを待つ作戦に変更。この日は切れ目を入れただけで終了となりました。
この木はインド・南アジア原産の「Melochia」。約150年前に緑化のためにハワイに導入されて、ハワイの固有種を駆逐してしまった問題の種族です、
数日後、猫のチビとベッドでまどろんでいると、ミシミシと奇妙な音が。と思ったら、ものすごい衝撃音が響いた。泥棒が家を破壊したのかと思ったら、なんと木が倒れていたのであった。しかも、倒れたのは夫が切れ目を入れたのとは別の木だった。
こやつは中央アメリカ原産の「Trumpet tree」。100年ほど前に緑化のためにハワイに導入されて、異常に増えて困っている種族。15メートルの巨木になる上に、幹が弱いので強風などですぐに倒れるので問題になっている。
その数日後、ハリケーンがハワイに向かっていることが判明。夫は急いで作業を再開した。くだんの木は家を直撃することなく倒れたのであった。
教訓:ハワイは植物の成長が異常に早いので、早めの対応が必要。油断すると手遅れになるので要注意!
No.270
相原光(アイハラヒカル)
フリーランスライター&翻訳
群馬県出身、早稲田大学卒業。2008年結婚してハワイに移住。夫は寿司シェフ。2012年4月双子猫パンとマーチを連れてハワイ島に引越。8月に玄米寿司とムスビの持ち帰り店「DRAGON KITCHEN」を夫婦でヒロにオープン。現在ライター兼寿司屋のお手伝いとして活動中。姉は漫画家の花福こざる。
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