前回、クジラの捕食についてお話ししましたが、海に生息する哺乳類で、魚類を捕食しているのはクジラだけではありません。
海の一番の大食いは、北太平洋に多くいる“シャチ”なのです。その体長は6~7mにもなり、体重はオスで4~5トンといいます。シャチは、魚以外にも、海鳥、イルカ、アザラシ、クジラやサメなども捕食してしまいます。シャチが集団でシロナガスクジラを襲うこともあります。大きなオスのシャチは、1日に100キロ以上も食べているようです。
シャチの次は、オーストラリア北部に多く棲んでいる“ジュゴン”です。体重450キロになるジュゴンは、海藻を主食としています。
そして第3位は、ずんぐり体型に長ひげと大きな二本の牙を持つ“セイウチ”です。体長は3mほとで、体重は900キロから1000キロになるオスのセイウチの好物は貝類、タコやカニ、エビなどの甲殻類と、ナマコなどの軟体動物です。1日に約30キロほど食べています。
4位は“イルカ”です。イルカは、一日に8~10キロのサバ、サンマ、イワシなどの小魚や、カニなども食べています。
5位は“アシカ”です。アシカの主食はイワシやサバで、体重の5%前後のエサを1日に食べていて、多いときは10キロも食べることがあるようです。総個体数は130万頭と言われています。
今世界人口が増加しているなかで、人類の食糧不足が危惧されています。1950年に約25億人だった世界人口は、2000年には61億人になり、50年の間に2.4倍に増加しました。今年2023年の世界人口は80億4500万人に達し、昨年に比べ7600万人増加しました。増加数が際立っているのがはインド、中国、パキスタン、バングラデシュ、インドネシアなどの国々やアフリカの国々です。2050年までに世界人口は、国連の推計では93億人に達すると予想しています。これだけの世界の人々の食料を満たすとすればどのように賄うのでしょうか。
米国は、広大な土地を持つ国として農産業や、牛、豚、鶏などの畜産業を発展させ、肉類、乳製品を中心にしてきました。近年になってようやく魚類も多く食べるようになりましたが、海洋性哺乳類を食料とする食文化をもたない米国は、動物愛護の旗印のもとに幾種の海洋哺乳類保護を世界に展開しています。
一方日本は、狭い国土、そして四方が海に囲まれているという国柄であるゆえに、その昔から米食を大事にしてきましたが、海産物も多く摂ってきました。
地球の3分の2が海であることを鑑みれば、限られた陸からの食料供給よりも、海に向けた食料確保対策に目を向けることの方が、より容易く智慧があることではないでしょうか。縄文時代から海の食文化を持つ日本です。そして、和食が世界文化遺産と評価され受け入れられている今日、日本は世界の食糧事情解決にも果たすべき使命と責任が大きいのではないかと思います。