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【ちょっと役立つ 日本の新製品】ブロックチェーン技術で、デジタルお守り
ついに出ました「デジタルお守り」です。1200年の歴史を持つ千葉県の検見川神社がお守りをネット経由で授与し、それをスマホなどに保存し、金運アップや家内安全、合格祈願などを願うというものです。お祓いして授与後、一年で自動的に消える「お焚き上げ」の機能も付いているそうです。お守りは10種類ほど、一体約1000円相当だそうで、仮想通貨イーサリアムで決済します。デジタルとは無縁と思われる神社が、この世界に進出したのは極めて面白いことです。
近年のデジタル技術により、仮想通貨、デジタルアートや音楽、コレクターズアイテムなどの保管・取引が、サイバー空間で盛んに行われるようになりました。
基本となるのは、ブロックチェーン技術なのですが、「暗号通貨」と呼ばれる「データ単位」の所有と譲渡を抜けなく、誤りなく記録し更新する「代替可能性(データはどこでも通用する通貨を表わし、通貨の量が異なるだけ)」のものと、絵画や骨董品などのコレクターズアイテムなどで代表される画像・動画・音声などのデジタルファイルを、一意なアイテム(つまりこれが唯一存在する本物で、誰それの所有だという証明つきのアイテム)として扱う「非代替性」のNFT技術に分かれます。デジタルお守りは後者の技術を用いており、単なるお守りの画像の複製ではなく、正真正銘の本物であり、唯一無二の存在で、授与された個人の所有であることをブロックチェーンで記録します。デジタルデータの複製や改ざんを防ぎ、固有の価値を保持するものとして、新たな市場やビジネスの創出が期待されています。
デジタルお守りを家族や友人などに贈答する場合、相手がメタマスクなどのウォレットを持っていれば簡単です。また、お焚き上げされた後のお守りはなくなりますが、そこから、新しい形に変化するようになっていて、その後も楽しめるそうです。神社によると、バーチャルなお守りといっても、授与時には祈祷も行うし、本物と比べ何ら遜色はないとのことです。
このNFT技術は、現在、主に投機資産として利用されることが多いのですが、ブロックチェーンの検証に必要なコンピュータの電力消費が大問題であることと、美術品詐欺などの悪徳商法に頻繁に利用されるなどで大きな批判があります。また、コレクターズアイテムのそのものを物理的に保管するわけではないのです。要は、土地の登記簿をデジタルで管理する場合と同じです。登記簿は不正に複製されたり、改ざんされることは防げません。
しかしブロックチェーンで追跡検証はできますので、デジタル資産を扱うには、今後大変有効な技術でしょう。この技術が扱うのは情報それ自体であって有体物(実体をもつ)ではないので、所有権、著作権、知的財産権など、法的な議論が必要です。
No.325
となりのおじさん
在米35年。生活に密着した科学技術の最新応用に興味を持つ。コラムへのコメントは、 [email protected]まで
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