チーズケーキというのは実にシンプルな料理である。基本の材料はクリームチーズと砂糖、卵、バニラエッセンス。これを混ぜて焼くだけ。
材料の含有量には無限のバリエーションがあるけれど、我が家のレシピは、クリームチーズとサワークリーム(またはヘビークリーム・日本の生クリーム)が1対1。台は市販のものを使用。10年近くこのレシピで作ってきた。
先日久しぶりにチーズケーキを作って、ふと疑問を持った。チーズケーキの作り方というのはこれで正しいのだろうか?
というのも、いつも問題になるのが焼き時間なのである。レシピは40分~50分くらいのものが多いけれど、50分で仕上がったことがない。一時間以上焼くと焼き過ぎとなり、クラストが固くなる。味は申し分ないので、焼き加減を改良したいと常々思っていた。
改めてチーズケーキの作り方を調べてみて、衝撃の事実が判明した。私の作り方は激しく間違っていたのである。
チーズケーキ作りで最も忌み嫌われていることは「表面にヒビ割れができる」ことだった。「いかに表面をなめらかに仕上げるか」というのが、最も重要なのである。火山のカルデラのように中央が陥没し、フチにヒビが入るというのは、絶対にあってはならないことだった。
私が今まで作ってきたチーズケーキは、ダイヤモンドヘッドやハレマウマウ火口のように見事なカルデラを形成していた。これは失敗そのものだったのである。神をも恐れぬ蛮行と呼んでもいい。
なぜ間違った技法を続けていたのか? ケーキは真ん中に火が通るまで焼くものだと思っていたからである。竹串で焼け具合を何度もチェックし、ようやく火が通る頃には、ケーキの中央は膨らんでいる。これが冷えると中央が陥没する。カルデラもチーズケーキも同じ現象が起きているんだな。ああ自然の営みよ。と思っていた。
ひび割れを避けるべく、様々な人類の叡智が紹介されていたので、ここで一部紹介。
- 材料をハンドミキサーで混ぜるときは低速で。
- 特に卵を入れたら混ぜすぎないこと(空気が入ると膨らんでしまうため)。
- 焼け具合をチェックするために竹串を刺すのは厳禁。
- 表面がツヤ消しになっていたら焼き上がり。(中央がちょっとフルフルしていてもOK)
掟を守って再度挑戦してみたら、まったく違う次元のチーズケーキができあがった。大変美味しゅうございました。
結論:お菓子作りの際は、いきなり応用はやめましょう。
No.249
相原光(アイハラヒカル)
フリーランスライター&翻訳
群馬県出身、早稲田大学卒業。2008年結婚してハワイに移住。夫は寿司シェフ。2012年4月双子猫パンとマーチを連れてハワイ島に引越。8月に玄米寿司とムスビの持ち帰り店「DRAGON KITCHEN」を夫婦でヒロにオープン。現在ライター兼寿司屋のお手伝いとして活動中。姉は漫画家の花福こざる。
like us on facebook “Dragon Kitchen Hilo”