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コラム 世界のマグロを追いかけて男の旅 こぼれ話

日本海の違法スルメイカ

 今、日本海がなにかと騒がしいのです。日本海には、東北地方や北海道の漁船だけではなく、韓国、北朝鮮の漁船も漁をしています。そこへ中国船までやってきてスルメイカ漁が行われていたことも日本を驚かせました。

 中国船は2017年に900隻以上、翌年も700隻以上が日本海の北朝鮮海域で違法イカ漁を行い、その漁獲量は164000トン以上(44000万ドル以上)と言われました。その量は日本と韓国合わせた総量にも匹敵したのです。

 中国船の帰港する所は、朝鮮半島の対岸に突き出た山東半島にある山東省威海市の石島漁港で、ここに多数の水産加工場があります。こうした中国船による違法スルメイカが中国で加工され、最後には日本へも輸出されて来るのです。それで日本国内のイカ業界が大打撃を受けるという、全く割に合わないおかしな話にもなってしまっているのです。

 違法操業などは、「IUU漁業(違法・無報告・無規制/Illegal, Unreported and Unregulated)」と呼ばれますが、そのIUU漁に取り組む漁師や、またその魚を取り扱う流通業者が多くいるのです。IUU漁業に対する取締は国際的な取り組みであり近年強化対策もとってきています。

 そもそも日本の半世紀前のスルメイカの漁獲量は66万トンもありましたが、2021年には過去最低の3万2千トンまで落ち込んでしまいました。こうした現状を国の水産庁や、自治体、漁協や漁師たちは、海水温度の上昇などの環境の変化を要因の一つと言っていますが、最大理由として、外国船による野放しの密漁や、自国の漁師の乱獲漁が要因と言えるででしょう。

 日本海に突き出す石川県の能登半島沖には、大和堆と呼ばれる日本海屈指のスルメイカの好漁場があります。その大和堆は、日本のEEZ(排他的経済水域)になりますが、かつてここに北朝鮮船が押し寄せていました。2020年からは北朝鮮船に代わって中国船が北朝鮮へ入漁料を支払ってスルメイカ漁を行いました。こうした中国漁船の操業は、2隻の船が網を引っ張る二艘引きという海底根こそぎ漁法なのです。こうした実態が日本海のスルメイカはじめ、他の魚資源まで枯渇へと押しやったと言えるでしょう。

 日本が中国を責めても、中国政府の言い分は「北朝鮮水域を含む日本海でイカをIUU漁獲する中国船には衛星測位装置をつけてはいるが、漁船側が測位装置の電源を切っているため捉えられない」としているのです。要は黙認していると言えるでしょう。

 中国漁船の横暴な漁獲活動が、日本海、南シナ海周辺のアジア海域だけでなく、太平洋はエクアドルのガラパゴス諸島沖にも260隻に及ぶ中国漁船が集結し、大規模なサメ漁を行ったことなどが大きなニュースになりました。

 世界を駆け巡る中国船の大掛かりな操業は、海の生態系や資源保護を無視し、破壊をしているのです。

STORY 191

永井 修二

北海道出身、在米38年 鮪関連水産会社34年勤続

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