世界初! 手指が本来そなえている、 感染症に対するバリア機能を発見
花王株式会社の研究所は、ヒトの手指には生来、感染症の原因となる菌やウイルスを減少させる機能、すなわちバリア機能が備わっており、風邪やインフルエンザのかかりやすさに関連していることを、12月14日、世界で初めて明らかにした。また、手指のバリア機能には個人差があること、さらに、このバリア機能には手汗から分泌される乳酸が寄与していることを解明した。
これまでの手指衛生の手段である手洗いやアルコール消毒の菌やウイルスの除去・不活化効果は、一過性のものであるのに対して、生来の手指のバリア機能は恒常的であることが特徴的だ。このバリア機能の発見は、生来の手指のバリア機能を高めるという新しい衛生習慣の提案や、商品開発につながるものと期待される。
大腸菌、インフルエンザウイルス などで実験
感染症にかかりにくい意識のあるヒトとかかりやすい意識のあるヒトを選別し、手指に大腸菌を塗布して、菌の現象を実験。また、手指表面の成分を採取して、菌やウイルスを減少させる効果を評価したところ、手指表面の成分には、大腸菌だけでなく、黄色ブドウ球菌やインフルエンザウイルス(H3N2)を減少させる効果があることが確認できた。数日間の経過検査でも抗菌性が高いヒトと低いヒトではその関係が維持されていることも分かった。
これらの結果から、ヒトの手指には菌やウイルスを減少させる機能が備わっていて、この機能を「手指バリア」と名づけた。
さらに手指表面の成分を採取し、黄色ブドウ球菌とインフルエンザウイルス(H3N2)を用いて抗菌・抗ウイルス活性と相関の高い化合物の特定を試みたところ、手汗から分泌される“乳酸”が重要であることが分かったという。
“乳酸”を活用して、 新しい衛生習慣を実現
これまでの手指衛生の手段である手洗いやアルコール消毒の菌やウイルスの除去・不活化効果は、一過性のものであるのに対して、生来の手指のバリア機能は恒常的であることが特徴的だ。この手指バリアの発見は、生来の手指のバリア機能を高めるという新しい衛生習慣の提案につながるもの。今後は、手指の感染症に対するバリア機能をより深く研究し、新しい衛生習慣の提案を通じて、世界の人々を感染とその不安から守る感染予防習慣の実現に貢献するという。
(文・奥山夏実)
(日刊サン 2020.12.18)
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