アメリカのシーフード缶詰業界は、いまやツナサンドの域を超え、大きく売上を伸ばしている。そのきっかけは、パンデミックの自宅待機中に自宅のパントリーに備蓄している食材が注目されたことにあるとAP通信が伝えている。
コロナ禍に需要が伸びて以来、SNSのインフルエンサーによる後押しもあり、米国でのシーフード缶詰の需要は伸び続けている。市場調査会社Circanaによると、米国のシーフード缶詰業界の売上高は、2018年の23億ドルから、今年これまでに27億ドル以上に成長しているという。
ヨーロッパでは以前から定番である魚の缶詰は、いまやサンフランシスコからヒューストン、ニューヨークまで、ワインバーのメニューの常連となっている。スパイス、オイル、ソースのバラエティ豊かな組み合わせでパックされた様々な魚介類を毎月会員に送るという、ワインクラブを真似た缶詰クラブさえある。缶詰の実食レポートから、缶詰の生臭さを消すコツまで、缶詰に関する動画はTikTokで3000万回以上再生されている。
2020年に開業したロサンゼルスを拠点とするフィッシュワイフ・ティン・シーフード社の缶詰には、塩、ガーリックソルト、ブラウンシュガーで塩漬けにしたスモークサーモンを、中国の成都で作られた四川唐辛子のチップスとともに手作業で詰めたものがある。カンタブリア海産のアンチョビには、スペイン北部の農家から直接仕入れたスペイン産高級エキストラバージンオリーブオイルが詰められている。
創業者のベッカ・ミルスタイン氏は、「私たちの製品は、夕食に招かれた人たちに出したくなるようなものだ。手早くつぶして、さっと安くタンパク質を補給するようなものではない」と語る。
ミルスタイン氏によると、フィッシュワイフ・ティン・シーフードの売上は2021年から2022年にかけて250%成長し、今年も150%成長する見込みであるという。
サンフランシスコのワインショップ兼バー「DECANTsf」の共同設立者であるシミ・グレワル氏は、調理に適したキッチンがないこともあり、顧客に提供するのはシーフード缶詰を使っている。
同氏は、「缶詰のシーフードは安いという思い込みがある。私の店に来ればわかると思うが、これは非常に高度にキュレーションされたプログラムだ。私は月に何時間も缶詰のことを調べ、最新の商品を見つけようとしている」と語っている。
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