8月8日(火)、ラハイナの住宅街を火の手が襲ったとき、マウイ郡の緊急事態管理機関は近隣住民の携帯電話に避難アラートを一斉送信したが、実際にはメッセージを受信できなかった人が多かったことが問題となっている。
ホノルル・スター・アドバタイザーの記事によると、「今すぐ家族とペットを避難させ、遅れないように行動を」という避難アラートが送信されたが、その警告を最も必要としていた多くの人々の携帯電話には届かず、彼らは、火災が自宅に向かっていたたため、あわてて奔走することになったという。この大火災で100人以上が死亡し、生存者の中には、なぜもっと早く事態が制御不能に陥っていることを知らせてくれなかったのかと訝しむ人もいる。
固定電話を持たない家庭が増え、家でテレビやラジオを視聴することも少なくなったため、緊急事態管理機関は、多数の人々に瞬時に届くワイヤレス緊急通報にますます重点を置くようになっている。しかし、この近代的なシステムには限界があり、携帯電話ネットワークの強度と救急隊員の熟練度というパッチワークのような地元機関の協力に依存している。
2012年に開始されたワイヤレス緊急警報システムは、連邦、州、地方当局が、悪天候、発生中の災害、誘拐された子どもに関するメッセージを単一の統一されたシステムで送信できるように設計されている。これまでに何万回も使用されてきており、10月4日に実施予定の緊急警報システムの全国テストにも組み込まれている。
テレビやラジオ、道路標識、ソーシャルメディアとは異なり、ワイヤレス緊急警報システムは特定の地域に絞ってアラームを鳴らすことができるため、就寝中などでも対象者の注意を引くのに有効だとされている。
記録によると、マウイ郡が携帯電話に避難アラートを出したのは、火災がラハイナの町を通過し始めた午後4時16分だった。この警報は、商業地区の東にある町の住宅地の一部に送信された。しかし、海沿いのフロント・ストリート周辺や、北と南にある他の地区はカバーされていなかった。
地元住民の証言によると、火災が迫っていたとき、AM・FMラジオやテレビの全チャンネルを確認したが通常の番組が放送されており、非常事態についての情報は流れていなかったという。
また、この日、町は停電と強風に見舞われ、携帯電話の電波は不安定だった。今回被災した地域の携帯電話サービスは頭上の光ファイバー線に大きく依存しているが、火災が拡大するにつれて光ファイバー線の損傷も悪化していった。AT&Tの広報担当者、ジム・グリア氏によると、この地域のすべてのワイヤレス・キャリアにサービスを提供しているファイバー・インフラが燃えたという。また他の多くの場所では通信網などのインフラは地中に埋め込まれているが、火山岩土壌のマウイ島では困難となっている。
災害警報の専門家であるオルバニー大学のジャネット・サットン教授は、ワイヤレス緊急警報システムは有用であり多くの人命を救うものであると同時に、非常にやっかいでもあると語った。同教授は、緊急警報システムにもっと冗長性を持たせ、ケーブルを埋設して耐障害性を高めることを検討するとともに、無線システムはあくまで一つの手段であり、これだけに頼ることはできないことを忘れないことが重要だと述べた。
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写真:Shutterstock.com
(日刊サン 2023.9.5)