ハワイ先住民リーダー ワクチン接種を訴える
感染力が非常に強いとされるデルタ変異株によってハワイ州内の感染拡大が止まない状況の中で、一部のハワイ先住民コミュニティではワクチン接種が進んでいない。
この状況を何とかしようと26日におよそ20名のハワイ先住民コミュニティのリーダーたちが立ち上がり、ハワイ王朝の最後の統治者クイーン・リリウオカラニの像の前でハワイ先住民の人々にワクチン接種を受けるようにと呼びかけたとホノルル・スター・アドバタイザーが伝えている。
1893年にアメリカ政府の協力によってハワイ王国が滅亡したため、ハワイ先住民の人々には政府に対する深い不信感が残っていると言われており、それがワクチン接種が進まない理由のひとつだという。
リーダーの1人であるペレイラ・ケアヴェカネ氏は「私は注射針が嫌いで、ただワクチン接種を受けたくないと先延ばしに来ました。ワクチン接種に関する正しい知識はなく、政府に対しては大きな不信感を抱いていました」と述べている。
しかし今ケアヴェカネ氏はワクチン接種を受けるつもりだという。
「私は(政府が推奨する)ワクチン賛成派でもないし、ワクチン反対派でもありません。どちらかを選ばなければならないというのは、ハワイ先住民の私たちにとっては過去のトラウマに起因します。でも周囲の人々を救うのであれば、ワクチン接種を受けます」
ハワイ州では人口の62.1%が現時点でワクチン接種を完了しているが、ハワイ先住民人口に限ると接種率はおよそ40%で他のグループと比べて最も低い数値となっている。
ハワイ先住民は州人口のおよそ21%を占めているが、感染者の28%は先住民だ。
ハワイ大学医学部でハワイ先住民の健康について研究しているケアヴェアイモク・カホロクラ氏は、「我々ハワイ先住民は個人的な意見よりもお互いを守ることを尊重するという文化があることを思い出してもらいたいと思います。ワクチン接種を拒絶することは非常に個人主義で、皮肉なことに、非常にアメリカ人的なのです」と述べている。
1800年代に天然痘が広がって非常に多くのハワイ先住民が死亡した時、ハワイ王国の統治者が人々に天然痘の予防接種を受けさせたことがある。
ハワイ島で服飾デザイナーをしているケオニ・ペイトンさんはワクチン接種を受けていないものの、ワクチン接種を受けることを選択する人々に対して応援するという。
「私は(ワクチンに反対というよりも)自分の体内に何を入れるかという選択を自分でするべきだと考えています。ハワイ王国の統治者が天然痘の予防接種を義務付けたということは関係ありません。ハワイ先住民として、我々はアメリカ政府から不当に扱われてきました。私たちの土地を奪ったのです。そして今、我々の体を奪おうとしています」
写真:Shutterstock
(日刊サン 2021.08.27)
シェアする