「パシフィック・アイランド・ビーチ・ボーイズ」という非営利団体は、クヒオ・ビーチにあるパビリオン(あずまや:庭園や公園に休憩や展望のためい設けられた簡素な小屋)3号と海岸にあるブルーボックス(ペンキで青く塗られた箱型の屋台)で、サーフィンレッスンや海遊具のレンタルを行ってきており、観光客に人気がある。
昨年12月18日、東側にあるもう一つのパビリオン4号での利用許可を獲得したが、半年後の今、この権利をホノルル市へ返還しようとしているとホノルル・スター・アドバタイザーが伝えている。
理由は、破壊行為やその他の犯罪による被害と、ホームレス問題だ。
同団体の代表のデービッド・カーバルホ氏は、「パビリオン3号とブルーボックスの使用許可を得た時には、自分たちのものとして運営することに成功しました。路上生活者たちに出て行ってもらい、掃除をして、最初の2週間は問題もありましたが、踏みとどまり、清掃を続けて状況は良くなったのです。しかしパビリオン4号の状況は手に負えません」と述べている。
同氏によると、新型コロナ対策としてカラカウア・アベニューにあるパビリオンが市によって閉鎖されたため、行き場を失ったホームレスの人々がクヒオビーチのパビリオンを占拠し、住みついてしてしまったという。
市の担当者によると、同団体は昨年12月17日から1年契約で3カ所の使用許可を得て10万ドルを支払っており、パビリオン4号での営業をやめることによって特に費用は発生しないと述べている。
ワイキキ周辺のホームレス問題は新しいものではなく、パビリオンでの問題も同様だ。
「周辺の屋台からは、過去にも破壊や迷惑行為の報告があります。ホームレス問題はワイキキやパビリオンだけでなく島内の至る所で見られますが、特にこの辺りでは犯罪につながっています。ホームレス自体は不法行為ではありませんし、周辺の犯罪が全て路上生活者と関係しているわけではありません。しかし、市民が公園施設を安全に利用できるようにするのは、市にとって最重要課題であると認識しています」
現実問題として、ワイキキにおける路上生活者の数は増加しており、今回パビリオン4号が空き家になったことで、さらに状況が悪化する可能性もある。
市では、ワイキキの事業者団体や福祉団体、警察からの協力を得て、毎週火、水、木の3日間に、ワイキキのホームレスに対する支援を行なっている。
2019年から、ダウンタウン地区からホノルル西部へ路上生活者が移動してきており、71%増加している。
ホームレス増加による景観の問題や犯罪の増加への対応は急務であり、州、市、観光業者、非営利団体が連携して取り組んでいる。
ワイキキに住むジョン・ドイツマンさんは、パビリオン4号が空き家になることで、ビーチをホームレスから取り戻そうという活動が大きな打撃を受けるだろうという。
また、法を犯した者がすぐに釈放されてしまう法システムに問題があると述べている。
「犯罪者たちは裁判所に行くのではなく、ワイキキに戻ってくるのです。観光地の中心だというのに、ワイキキの交番とビーチの壁の周辺はひどいものです。人々は路上で糞尿をし、酒を飲んでケンカをし、クスリをやっているのです」
パビリオン4号が建設された当時、そこは地元住民や観光客が日陰で休み、砂浜や美しい海を眺める場所、音楽を演奏したりチェスを楽しんだりすることができる、人々が集う場所だった。
それが、ホームレスと犯罪が横行する場所として知られるようになってしまったのだ。
2020年には、カーク・コールドウェル市長(当時)が、248,000ドル(約3425万円)をかけて柵を作り、夜間の使用を不可としたが、その後、柵は曲げられゲートは壊され、現在ではパビリオン4号の柵には人ひとりが通れるほどの隙間ができている。
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写真:Theodore Trimmer / Shutterstock.com
(日刊サン 2022.7.18)