アフリカ系男性銃殺事件で警官ら不起訴 刑事責任問われず
今年4月、南アフリカ出身で黒人男性のリンダニ・ミエニさん(29)が警官に銃殺された事件について、スティーブン・アルム検察官は6月30日、ホノルル検察局本部で1時間以上にわたり記者会見を行った。アルム検察官は冒頭で「現場にいた警官らの警察権行使は正当なものと判断されたため、彼らに刑事責任は問われない。ミエニさんの人種が事件に何らかの影響をもたらしたという証拠は見当たらなかった」と述べた。
ウィリアム・S・リチャードソン法科大学院のケネス・L・ローソン教授は、「警官の発砲は正当だったというアルム検察官の主張に混乱した。この事件では、警官が他の警官を守るために発砲したが、それだけなら刑事訴訟を起こすのは難しい。問題は、警官らがミエニさんに口頭で身元を明かしたのが、彼らが4回発砲した後だったということだった」と話した。
検察局が作成した調査報告書によると、事件が起こった日の4月14日、ミエニさんは午後7時15分から午後7時30分まで「頭をすっきりさせる」ために家を出たという。その後、ミエニさんは奇妙な振る舞いをした。ケワロ・ベイスンで車両侵入防止の任務に当たっていた警察官の業務を妨害し、警官に食料を買うための金を要求した上、警察車両に乗ろうとした。その後、クラクションを鳴らしながら車で走り去った。午後7時52分、妻のリンゼイさんに「家に帰る途中だ」と告げた。
その時ミエニさんが運転していたのは、テキサス州のナンバープレートの2015年製4ドアマツダ3だった。ケワロ・ベイスンにいた警官の1人は「ミエニさんの車はライトをつけていなかった」と証言した。ミエニさんが駐車中の警察車両の中にいた警官に近づいて来たため、警官は6フィート離れてマスクを着用するよう促した。その際、ミエニさんは「私は警察を恐れていない。カイルアでキックボクシングのクラスを受講しているんだ」と話したという。
それから約30分後、ミエニさんは事件の起こったヌウアヌの住宅に直行した。そして私道に車を走らせながら住民の夫婦を追いかけた。妻は911に電話をし「ミエニさんが玄関から入ってきて、家の中を約5分間うろうろしていた」と話した。911に電話する前、彼女は911に電話するふりをし、ミエニさんに立ち去るよう何度も頼んだ。ミエニさんは羽毛の付いたカチューシャを頭に付けており、「私が南アフリカ出身だと伝えてくれ。私はサファリで狩りをしている。我々は狩りをしている。時間がない」と話した。そのため、夫婦は自分たちを獲物に見立てていると解釈したという。
現場にいた警官が身につけていたボディーカメラの映像では、ミエニさんは彼に銃を向けながら地面に伏せるよう命じた警官を殴り、顔面骨折と脳震盪を負わせた。ミエニさんは「あなたは誰なんだ」と叫んだが、警官は彼が4回撃たれるまで口頭で身元を明かさなかった。警察署と検察局は「警官が制服を着ており、警察車両が側にあったことで意図は明確にされていた」と結論づけた。
一方、ミエニさんの妻のリンゼイさんはHPDに対して民事訴訟を起こしている。妻の弁護士のジェームス・J・ビッカートン氏は「刑事的責任を追求しないというアルム検察官の決定は、民事訴訟に影響を及ぼさない」と述べた。
写真 : Shutterstock.com
(日刊サン 2021.07.01)
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