フェンタニルは、主に麻酔や鎮痛、疼痛緩和の目的で利用される合成オピオイドで、処方箋があれば合法的に使用が許可される医薬品だ。
ヘロインの数十倍の作用があると言われるフェンタニルが、不法な手段でアメリカ西海岸やメキシコ国境からハワイへ送られてきているとKHON2が伝えている。
ハワイでの不法薬物売買取り締まりを担当しているギャリー・ヤブタ氏は、「フェンタニルの脅威は確実に州内に存在している。ハワイには到達しないだろうと思っていたが、間違いだった」と述べている。
米疾病予防管理センター(CDC)によると、昨年1年で71,000人以上がフェンタニルの摂取で死亡しており、2020年の57,000人を大きく上回っているという。
フェンタニルは、覚醒剤やコカインなど他の不法薬物と比べ、最も死亡率が高い薬物だ。
州では昨年22人がフェンタニルが原因で死亡していると言われているが、衛生局では、実際にはさらに多いと見ている。
薬物治療施設(HHHRC: Hawaii Health & Harm Reduction Center)のエグゼクティブ・ディレクター、ヘザー・ラスク氏は、「これまでは、新しい薬を一度試したとしても、それで悪影響を受けることはあっても死ぬことはないと言ってきましたが、フェンタニルは違います。一度試しただけで死に至ることがあるのです」と述べている。
州内でのフェンタニル問題が大きくなってきた頃から、HHHRCでは過剰摂取対応として、ナロキソンと呼ばれる麻薬拮抗剤投与の治療の運用を行っている。
ナロキソンはスプレーボトルの形態で、フェンタミルを過剰摂取した患者に投与される。
1分間に呼吸が10回以下、唇が紫色、意識がない場合には、ナロキソンを鼻からスプレーするという。
HHHRCでは、このナロキソンを州内の各警察署と麻薬密売対策チームに供給しているが、その需要が急増している。
2021年には6,500回以上が投与されているが、今年は5月までですでにその数字を超えたという。
法執行機関では、麻薬売買の摘発を行う一方で、市民に対する啓蒙活動にも力を入れている。
ヤブタ氏は、「ソーシャルメディアで、すごいもののように宣伝されており、影響を受けやすい子供や青少年にとっては非常に危険で、特に注意しなくてはならない」と述べている。
HHHRCの活動についての詳細はこちらから。
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写真:Shutterstock.com
(日刊サン 2022.6.30)