地球を一周する耐久ヨットレース「ジ・オーシャンレース」に参加中のボートが、ジブラルタル海峡に向かう途中、シャチの群れと接触した。研究者によると、イベリア半島のシャチは時に攻撃的な接触をしてくる傾向が強まっているという。
AP通信の報道によると、22日(木)に開催されていたジ・オーシャンレースにて、少なくとも3頭のシャチが15分間にわたりボートに接触してきたという。乗組員は近づいてくるシャチを追い払おうと帆を下ろし、大きな音を立てた。負傷者は出なかったが、チームJAJOのスキッパーであるジェルマー・ファン・ビーク氏は、レースのウェブサイトに投稿されたビデオの中で、「恐ろしい瞬間だった」と語っている。
チームJAJOがオランダからイタリアに向かう途中、地中海の河口にさしかかったとき、少なくとも3頭のシャチがVO65クラスのスループ船に接近してきた。乗組員が撮影したビデオには、シャチの1頭が舵をくわえているように見える様子が、また別のビデオには、シャチの1頭が船体に鼻を突っ込む様子が映っている。
「3頭のシャチが向かってきて、舵を叩き始めた。美しい動物である彼らを見たときは感動したが、チームとしては危険な瞬間でもあった」とビーク氏は述べている。
専門家らは、イベリア半島西岸沖で過去4年間、平均体長5〜6メートル半、体重3600キログラム以上のシャチがボートにぶつかったり、傷つけたりしたという報告が増えていることを指摘しており、今回のレースのボートクルーたちも危険について警告を受けていた。
チームJAJOの船上レポーターのブレンド・シュイル氏は、「シャチが襲ってくる可能性があることは知っていた。もしそのような事態が発生した場合の対応については、すでに話し合っていた」とし、シャチの接触に対しては、デッキに総員を呼び、12ノットのレーシングスピードから船を減速させるために帆を下ろしたと語っている。乗組員はシャチを追い払うために音を立てたが、ハーグからジェノバまでの航路で2位から4位に転落した。
ジ・オーシャンレースは、IMOCA60を含む2クラスのレースが行われ、約6カ月間、3万2000海里(5万9000キロ)の地球一周を競う「海のダカール・ラリー」だ。艇はすでに、巨大な海藻の群れ、壊滅的な機器の故障、そして決定的な第7区間でリーダーが脱落するような衝突と闘ってきた。
レースコースは、既知の海洋生息地を保護するために立ち入り禁止区域の周囲を航行するが、野生動物との接触のほとんどはボートがクジラに衝突する事故であり、クジラからボートに近づくことはないという。
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写真:Shutterstock.com
(日刊サン 2023.6.26)