ハワイでは牛肉の自給自足率は低く、ほとんどを州外からの輸入に頼っている中、地元の農業が少しずつ変わりつつあると、ハワイ・ニュース・ナウが伝えている。
地元のパーカー牧場産の牛肉が、7月5日(水)以降、セーフウェイでの取り扱いがなくなり、代わりにアメリカ本土の投資家によるブランド牛が販売されることとなった。
ハワイの農園では牧草牛が育てられているものの、それらの牛は1歳の仔牛の状態でアメリカ本土の肥育場へ出荷されている。ハワイでは、この「カウ・カーフ」オペレーション(仔牛育成)と呼ばれるビジネスモデルが何十年にわたり続けられてきた。
しかし、そんなハワイの牧草牛ビジネスに変化の兆しが起きている。アイダホ州の牧場主で投資家のフランク・ヴァンダースルート氏は、ハワイ州の2大屠殺場を所有し、業界に大きな投資を行っている。
ヴァンダースルート氏の市場支配力を懸念する声もあがる中、このような環境の変化が、地元の食肉ビジネスに大きな成長をもたらし、地元のスーパーマーケットで消費者の選択肢を増やすことにつながる可能性も出てきている。
ヴァンダースルート氏は、「ハワイでは、牧草を収穫したり、冬の間に牧草を与えたりする必要がないので、アメリカ本土で牛を育てるよりもコストがかからない」とし、ハワイの食肉産業に鉱脈を見出している。
同氏は、ハワイ島パアウイロとオアフ島カラエロアという2つの主要屠殺場に2700万ドルを投資した。「そのリターンは、今日までマイナスだった。そして、これからもマイナスであり続けるだろう。我々は、今後の10年に向けて進んでいく」と語る。
ハワイ・キャトルメンズ・カウンシルとハワイ大学熱帯農業学部によると、2018年、4万3500頭の仔牛がハワイから出荷されたが、ハワイ州内で成熟期まで育てられ加工されたのは約1万1100頭だけだったという。
一方、地元で加工された肉は、ハワイで消費される牛肉の6%程度に過ぎなかった。
ハワイで牛を育てれば、地元の食料品店に並ぶまで、もっと上質な牛肉が生産できるということを、牧場主に納得してもらえるかどうかが、牛肉産業を復活させるカギになる。パニオロ・キャトル・カンパニーというブランドを持つパーカー牧場は、それが可能であることを証明した。
パーカー牧場のCEO、ニール・“ダッチ”・カイパー氏は、ハワイのセーフウェイ・チェーン全体の需要に応え、高級ブランドを生産するのに十分な肉牛を育てるまでに、10年を要したと述べている。「素晴らしいプログラムであり、私たちはそれをとても誇りに思っている」と同氏は語る。
牧草飼育では、穀物を飼料とする本土の肥育場の牛のように太らないため、牧草食のために特別に飼育する必要がある。これは非常に難しいことだが、「適切な遺伝子を持つ牧草で育てたステーキは、霜降りが美しく、人々に好まれる」とチャド・バック氏は語る。バック氏は、食料品流通会社ハワイ・フーズサービス・アライアンスのオーナーで、パーカー牧場とカウ地区にあるクアヒヴィ牧場がセーフウェイとフードランドにグラスフェッドビーフ・ブランドを供給するサプライチェーンの構築を支援した人物だ。
しかし、パーカーとクアヒヴィは、ヴァンダースルート氏の加工工場の価格政策によって苦境に立たされている。両牧場は、草食牛を生産し続けるために必要な価格設定に苦労している。
流通を握るバック氏は、成功するかどうかは、現在対立している利害関係者が、その違いを解消して一緒になることにかかっていると言う。「ハワイがより持続可能な食糧安全保障の未来に向かう必要があることは、すべての関係者が知っている。そして、それは今いるメンバーで完全に可能なはずだ」
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写真:Shutterstock.com
(日刊サン 2023.6.21)