スタンドアップコメディアンのジョセリン・チア氏が、シンガポールとマレーシアの歴史的半目を題材にしたジョークをソーシャルメディアに投稿したところ、激しい反発を招き、外交問題にまで発展しているとニューヨーク・タイムズが報じている。
チア氏は4月、マンハッタンにあるコメディクラブ「コメディ・セラー」にて両国を題材にしたジョークを披露。その動画を、今週、TikTokとインスタグラムに投稿した。動画は89秒ほどで、シンガポール出身のチア氏がマレーシア人の観客と談笑する様子が映し出され、2014年に239人を乗せたマレーシア航空370便が消息を絶ったことを軽んじる形で締めくくられていた。
腹を立てたマレーシア人たちは、チア氏のコメント欄に殺到。またコメディ・セラーのグーグル・レビューは一夜にして4000件もの星1つ(最低)レビューを受けた。TikTokは、コミュニティガイドラインに違反しているとして、この動画を削除した。
シンガポールのビビアン・バラクリシュナン外務大臣も、「彼女はシンガポール人の代弁者ではない」とツイートし、チア氏を非難。彼女の「恐ろしいコメント」に対して謝罪を表明した。
この一件は、エッジの効いた定番ジョークが、深夜のアルコールが充満したクラブという本来の生息地から取り出され、ソーシャルメディアに投稿されて万人の目に触れるという、コメディアンにとって危険なラインを示した。コメディ・セラーのオーナーであるノーム・ドーマン氏は、「クラブではとんでもないことを言っても許される。しかし、朝のコーヒーを飲みながら見るような小さなスクリーンでは、同じ瞬間を表現することはできない」と話している。
チア氏は、コメディ・セラーの要請で一旦動画を削除し、クラブのロゴを抜いた動画を再投稿した(その後TikTokによって動画は削除された)。「ヘイトを言う人たちが勝ち、私を引き下がらせたと思われたくなかった」とチア氏は語っている。
ドーマン氏は、否定的なレビューが相次いだことに関して、「チア氏の発言に対する反論でもなければ、彼女のジョークが人を傷つけるものだと思慮深く訴えるものでもない。ただ相手をやり込めるために力技を使っているに過ぎない」とコメントしている。
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写真:Shutterstock.com
(日刊サン 2023.6.13)