絶滅危惧種のハワイ固有種イトトンボ、個体数が安定
過去数十年の間、オアフ島の科学者たちは少なくとも5回、絶滅の危機に瀕している野生のイトトンボの個体数を増やそうと試みてきた。このほど、最新技術を導入した飼育プログラムに加え、イトトンボを野生に戻す作業を1年間続けた結果、これまでになく楽観的な結果が出たとホノルルスターアドバタイザーが報じている。
ハワイ州土地自然資源局で無脊椎動物プログラムに取り組む昆虫学者、ウィリアム・ヘインズ氏は「これまでで初めて、野生の状態の第2世代のイトトンボを見た。我々が正しい作業をしている証拠で、励みになる」と語った。オレンジブラック・ハワイアン・イトトンボは、かつてハワイでのみ発見された約25種の固有種のイトトンボの1種だ。1900年代初頭、オアフ島で最も一般的に観察された昆虫の1つであり、住宅の庭、タロイモ畑、池など、標高の低い場所が生息地だった。このイトトンボは在来種の植物の受粉を媒介し、栄養素を再利用する形で在来種の鳥に捕食されるなど、ハワイの生態系において重要な役割を果たしている。また、蚊などの小さな害虫の駆除にも役立っている。
しかしながら1900年代初頭、蚊の駆除のためハワイに輸入されたメダカの一種「カダヤシ」がイトトンボを絶滅危惧種に追い込んだ。カダヤシは水棲のイトトンボの幼虫も捕食する。1979 年にはオアフ島のオレンジブラック・イトトンボは絶滅したと考えられていたものの、1994年にトリプラー陸軍病院の敷地内で少数の個体群が発見された。イトトンボは街中を流れる小川に聖域を見つけていた。オレンジブラック・ハワイアン・イトトンボの個体数はマウイ島、モロカイ島、ハワイ島でも微小であることから、2016年に米国の絶滅危惧種リストに追加された。
昨年、州森林野生生物局及び陸軍に所属する生物学者と技術者の研究チームが、飼育施設で育てられた成体イトトンボ数百匹を毎週、ディリンガム飛行場近くの小さな湧き水の流れに沿って放した。放されたイトトンボは翼に小さな固有番号が記されていて、その数は約4,500匹。研究チームは来月から、イトトンボを放すのをやめ、今まで放してきた個体群が自力で生き残れるかどうかを観察する。既にここ数カ月間で第 2 世代のイトトンボが一定数見られている。ヘインズ氏は6月3日、観察された107匹のイトトンボのうち17匹は野生で繁殖したことを確認したという。
写真: Shutterstock.com
(日刊サン 2021.06.07)
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