「TMT計画、ハワイ先住民の同意必要」諮問委員会会長が声明を発表
カナダ天文学協会及びカナダ天文学研究大学協会の合同TMT(Thirty Meter Telescope)諮問委員会のマイケル・バロー会長が、声明の中で「ハワイ先住民の同意がない限り、TMTプロジェクトをサポートすることはできない」と述べたとホノルルスターアドバタイザーが報じている。
バロー会長は「我々の立場は一貫しているが、TMTのパートナーであることや、TMTの科学的可能性及びエンジニアリングの卓越性に対しては引き続き情熱を持っている。今回の私たちの声明により、プロジェクトへのコミットメントが変わることはない。カナダの天文学コミュニティは今後もハワイで進行中のプロセスを尊重する」と述べた。
現在計画されているTMTプロジェクトは、カリフォルニア大学、カリフォルニア工科大学、中国、インド、日本、カナダの科学機関の合同プロジェクトで、総工費は24億ドル(2620億円)に及ぶ。カナダ政府は2015年、天体望遠鏡のドーム・エンクロージャーの製造を含めた同プロジェクトに2億4,350万ドル(475億円)を投じた。
ハワイ島マウナケア山で計画されている最先端の天体望遠鏡の建設は、主にハワイ先住民の抗議団体により建設車両の現場への到着が阻止されるなどし、少なくとも6年間保留されている。カナダが先住民の権利に関する国連宣言に署名したことにより、先住民コミュニティが伝統的に所有する土地でのプロジェクトについて、事前情報に基づく先住民からの同意が必要となった。バロー会長は「コミュニティに歓迎された場所にのみ、天文施設を建設することが私たちにとって重要だ」と述べた。今回の場合、同意はカナダ人ではなくハワイ先住民を中心としたコミュニティに委ねられている。
反TMT抗議リーダーのノエノエ・ウォン・ウィルソンは、今回のカナダの声明を歓迎し、さらに多くの望遠鏡プロジェクトのパートナーや天文学コミュニティに受け入れられることを期待していると述べた。一方、ハワイ先住民のサミュエル・ワイルダー・キングII氏は「コミュニティは民主的な政治プロセスを通じ、既にTMTプロジェクトに同意している」と話している。TMT国際天文台理事会のヘンリー・ヤン会長は、声明の中で「我々は、コミュニティの知恵とビジョンを高く評価している。ハワイのコミュニティに敬意を持って協力し、ハワイの文化、伝統、環境を尊重する道を見つけていきたい」と述べた。
写真:Matt Gush / Shutterstock.com
(日刊サン 2021.05.19)
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