香港の新聞社「明報」(Ming Pao)は、香港で最も著名な政治漫画家の尊子(Zunzi)ことウォン・ケイ・クワン氏の連載を中止することとなった。ウォン氏は明報にて40年にわたり作品を掲載し続けてきた。
AP通信によると、明報は今回の契約解消についての詳しい理由を発表していないが、ウォン氏の漫画が政府からの苦情を受けたためだとし、北京主導の弾圧の後、言論やメディアの声が小さくなった一つの新たな例であると伝えている。
ウォン氏は、AP通信に宛てたテキストメッセージで、「連載中止の理由は誰もが知っているが、誰もその理由を『明言しない』」と、笑顔を示す2つの絵文字を添えて述べている。同氏コミカルな絵は、1997年に香港が英国の植民地から中国統治に返還される前から、香港社会の不満を風刺していた。
ウォン氏は、都市の言論と表現の自由が縮小していると感じているが、自分ができる限り創作を続けるつもりだと語り、今後の作品発表については、他の方法を探すつもりだと付け加えた。「正直なところ、明報がこれまで私の漫画を掲載させてくれたことにとても感謝している。もし他のメディアだったら、もっと早く出版停止になっていただろう」
2019年の大規模な民主化運動を受けて北京が国家安全保障法を制定して以来、北京のアートやメディアのコミュニティは、共産党の支配に反抗していると受け取られかねない作品やその他のコンテンツの制作において、曖昧に定義されたレッドラインを越えないように慎重になっている。当局はまた、植民地時代の治安法を用いて、批判的な声を標的にすることも増えている。
ウォン氏の複数の漫画は、ここ数カ月、治安局を含むさまざまな政府部門によって批判されてきた。最近では、内政青年局が、今年末の地方議会選挙で候補者を選ぶ地方委員を任命するという政府の役割を「中傷」しているとして、彼の作品を非難している。なお、当該の作品では、試験に落ちた人や健康に問題がある人でも、「上官」が適切と判断すれば委員に任命できると、男性が女性に伝えている様子が描かれていた。
地方議会を見直す政府の計画によると、多くの政府支持者で構成される地方委員会が470議席の約40%を選出することになる。地方議会は香港で国民が選んだ最後の主要な政治代表機関だが、直接選挙による議席の約90%から英国植民地統治下の水準よりもさらに低い約20%に削減される。
明報の編集部は、「明報は、この40年間、私たちとともに時代がどのように変化してきたかを目撃してくれた尊子に感謝の意を表したいと思う」と発表している。また、明報スタッフ協会はFacebookページで、報道以外のコラムニストの作品も明報のコアバリューの一部であるとし、ウォン氏の作品が新聞で紹介されなくなることに遺憾の意を表し、「多様化した社会は、さまざまな声を受け入れるべきだ。各界が言論の自由を尊重することを望む」と綴っている。
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写真:Postmodern Studio / Shutterstock.com
(日刊サン 2023.5.11)