ハワイ州ではパンデミックの影響で約2年間一度もクルーズ船の出航がなかったが、現在は予約が繰り越し需要に追いつき、クルーズ船でのハワイ観光が軌道に乗っているとホノルル・スター・アドバタイザーが伝えている。
クルーズ船内で発生した感染拡大を受け、米疾病管理予防センターは2020年3月から「出航禁止」を発令した。パンデミック中の2020年、2021年も、州によって義務付けられたワクチン接種、検査、検疫規制のもと、飛行機でのハワイ旅行は可能だったが、クルーズ産業は約2年にわたり閉鎖されたままとなった。
パンデミック規制の緩和により、2022年にはハワイ全体の旅行者数は90%近く回復したものの、クルーズでの旅行者はパンデミック前の2019年の数字から57.5%のみの回復にとどまった。しかし、その理由のひとつは、クルーズの予約の多くが1〜3年先がけて取られることにある。
クルーズラインの予約数は、2019年初旬と比較して、今年最初の3カ月の方が大幅に高い数字となっている。ブルームバーグ・ニュース・サービスによると、先週、ハワイを拠点とする「ノルウェージャン・クルーズ・ライン・ホールディングス」は、予想を上回る四半期決算と記録的な予約数を報告したという。同社はハワイ諸島全体のクルーズ乗客数のおよそ40%を占める乗客数2300人のプライド・オブ・アメリカの運行で知られる。また、ロイヤルカリビアン・クルーズも通年の利益予想を引き上げて株価を急騰させたという。
州ビジネス経済開発及び観光局(DBEDT)の予備データによると、2023年第1四半期に州外の20隻のクルーズ船で4万5320人が到着し、さらにプライド・オブ・アメリカ号が毎週島々を周遊するために2万8351人が飛行機で到着している。このことからも、クルーズ旅行の急増は明らかだ。
データによると、第1四半期のクルーズ客総数7万3671人は、パンデミック前の2019年同時期の乗客数7万0513人を上回っており、第1四半期に船で到着した旅行者の支出は、2019年同時期から52%増の1960万ドルに達している。
「クルーズは力強く戻ってきた」と、ハワイ州観光局がクルーズ業界へのハワイ代表として契約したマイアミのマーケティングコンサルタントグループである「アクセスクルーズ」社のシャノン・マッキー社長は語る。「米国ブランドはいち早く回復し、ハワイにまっすぐ戻ってきた。彼らはハワイが大好きで、ハワイに対する需要がある。国際ブランドについては、通常であれば少なくとも数種類の世界クルーズブランドが寄港していたが、現時点ではまだ回復していない。しかし、戻りつつある」
ハワイは2022年1月9日に約2年ぶりにクルーズ船を迎え、プリンセスクルーズラインズのグランドプリンセスが2138人の乗客とクルーを乗せてロサンゼルスからホノルル港に到着した。また、ノルウェージャン・クルーズ・ラインは2022年4月にハワイ・クルーズを再開している。マッキー氏は、「プライド・オブ・アメリカ号については、他の業界が直面したのと同様の労働力不足を経験しながら、一貫したサービスを確保するために2022年にゆっくりと容量を増強した」と述べている。
港のスケジュールを追跡するウェブサイトPortCall.comによると、1月にハワイに初寄港し、秋と冬に何度も寄港を予定している高級ラインのバイキング・クルーズを含め、来年にかけてハワイにはいくつかの新しいクルーズラインや復帰クルーズラインが登場する予定となっている。
マッキー氏は、クルーズ市場はハワイにとって価値があり、乗客にハワイ諸島を体験してもらい、気に入った目的地に長期滞在する機会を提供することができると述べている。また、クルーズの利用者は、レンタカーを借りて自分で観光するのではなく、観光スポットやアトラクションを巡るツアーやプライベートなショア・エクスカーションを選ぶため、フットプリント(旅行者が出歩くことで及ぼす影響)が少なくて済むことも利点であると述べている。
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写真:Shutterstock.com
(日刊サン 2023.5.8)