ヨーロッパの国々は深刻な食品価格の上昇に直面しているが、なかでもハンガリーでの価格高騰は最も激しく、住民の生活に大きな影響が出ているとAP通信が伝えている。
ここ数カ月、ヨーロッパ全域で劇的に食品価格が上昇し、3月には前年同月比19.6%増となり、エネルギーコストの低下と重なりインフレの主因となった。しかし、欧州連合(EU)統計局ユーロスタットによると、ハンガリーでは、食品価格が1年間で45%以上も急騰し、次に高いスロバキアの29%強をはるかに上回っているという。
これらの食品価格の高騰は、中欧の消費者に大きな打撃を与え、購入する食品の種類や量を変えざるを得なくなり、また販売側も商品の見直しを迫られている。
ブダペストの歴史的な大市場ホールにある精肉店の店長、シルヴィア・ブクタ氏は、「ソーセージやハムが高級食材とみなされるまでになっている」と話す。「高すぎるので買う量も減らさなければならないし、客の数も減っている」
ハンガリーの食品の中には、この1年で価格が2倍近くになったものもある。卵、牛乳、バター、パンなどの主要食材は72%から80%も値上がりしており、月給の中央価格が900ドル強のこの国で、家計を圧迫している。
INGハンガリーのチーフエコノミストのピーター・ビロヴァッツ氏は、ウクライナ戦争が生活費危機を煽り、ヨーロッパのほとんどの経済が同様の困難に直面している中、ハンガリーの農業と食品加工産業の非効率性と歴史的なフォリント通貨の切り下げが、この国の「極度のインフレ」をEU内のどこよりも悪化させていると説明する。「至る所で干ばつが発生し、エネルギー価格が上昇し、サプライヤーコストが上昇した。生産が効率的でなければ、当然、国内生産者は、これらのコストの支払いに負担を感じるだろう」
ハンガリー全体のインフレ率は25.6%に達し、先月平均が8.3%に鈍化したEUの中で最も高くなった。生活費の高騰は、賃金の急激な上昇を招き、企業が一部顧客に押し付ける追加コストとなっている。
ハンガリーは小麦、トウモロコシ、油糧種子、肉の主要生産国だが、国家食品連鎖安全事務所の2022年の調査によると、ハンガリーの食料品チェーンに並ぶ食料品の約30%が輸入品であることが判明している。
ハンガリーフォリントは昨年、米ドルに対して40%以上、ユーロに対して20%以上弱くなったため、輸入のコストが上がり、店頭に並ぶ商品の価格も大幅に上昇しているという。しかし、ビロヴァッツ氏は、人々の購買力や貯蓄が低下しているため、食品に高いお金を払おうとはせず、供給者が余分なコストを転嫁することができないだろうと述べている。
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写真:Shutterstock.com
(日刊サン 2023.4.21)