ハワイ経済の多様化には今後数十年かかる見通し 州立法会議識者らが意見
ハワイ経済の多様化には今後数十年かかる見通し
州立法会議識者らが意見
新型コロナによるパンデミックの開始以来、ハワイでは観光に依存しない経済産業開発についての議論が交わされてきたが、実質的な進展はほぼなかったとホノルル・スター・アドバタイザーが報じている。
エネルギー、経済開発、観光及びテクノロジー委員会議長のグレン・ワカイ州上院議員は「我々はパンデミックで引き起こされた経済問題から何も学ぶことができなかったようだ」述べ、「予想よりも早期に観光業による経済環境が回復しつつある現在の状況が、州の経済多様化について議論する機会をさらに減少させている」という見方を示した。
州立法会議は、1月25日、デービッド・イゲ知事によるスピーチで開始された。このスピーチで知事は、ポストコロナに向けての「ハワイ2.0」経済を呼びかけた。知事は「政府や企業、非営利団体は、経済活性化に向けてのデジタル・テクノロジーを積極的に採用する必要がある」と述べ、「我々の文化と生活様式が両立できる多様で持続可能な経済社会に向けて、明確なビジョンを開発する必要がある。そのビジョンは確かな経済分析に基づかなければならない。ポストコロナのハワイ州は以前のような状態に戻ってはならない」と強調した。
一方でワカイ上院議員は、養殖漁業、テクノロジー、航空宇宙、代替エネルギー、農業の多様化について、投資または拡大するための具体的な取り組みについての質問を受けた際、今の段階では「何もない」と断言。その上で「我々は現在『観光牛』を搾乳する以前と同じ古い方法に戻りつつあるだけだ」と述べた。ワカイ上院議員の委員会は12日、ハワイに拠点を移すことを考えに入れている企業500社のリストを作成し、これらの企業がハワイに拠点を移すための潜在的インセンティブを示すよう、州の経済開発省及び観光省に求める決議を可決した。また、ポストコロナのハワイの経済復興に備え、官民パートナーシップ・モデル開発を目的としたワーキング・グループの組織化をハワイ・コミュニティ財団(HCF)に要請した。
HCF最高責任者マイカ・ケイン氏は「パンデミックという非常事態下で多くの人々が収入を失ったが、その際、食糧不足に対応した政府、慈善団体、民間団体の間の共同作業を強化することは重要な課題だ」との考えを明らかにした。その上で「手頃な価格の住宅開発や州経済の多様化など、ハワイ州が長年抱えてきた問題に対処するため、本土からより多くの投資が必要だ。我々は堅調な観光経済を維持しながら、先に述べた経済の多様化に取り組むことができるはずだ」と述べた。
ハワイ大学経済研究機構事務局長及び新型コロナに関する州議会議事堂選択委員会のメンバーであるカール・ボナム氏は、現在のハワイの観光産業は、かつて砂糖とパイナップルの栽培に依存していた島の経済を多様化するために行った長年の努力の結果であると述べた。ハワイ州の観光産業への転換は、第二次世界大戦後の旅行ブームや空路の発展などの外力も起因となった。ボナム氏は「今すぐに経済多様化を達成する手段はどこにもない。数十年単位で計画し、それに向けての努力を行うべきだ」と述べた。また「ハナウマベイやダイヤモンドヘッドなど、主要な観光地へのアクセスを制限したことで、過去1年間で観光地をより適切に管理するためのスキルを磨くことができた」と考えを述べた。
オーストラリアのカーティン大学ビジネス・スクール及びバンクウェストカーティン経済センター上級研究員のスティーブン・ボンドスミス氏は、ハワイが観光に代わる別の産業を見つけるのは難しいとの見方を示している。その上で「ハワイや西オーストラリア、ニュージーランドのような孤立した小さな場所は、大規模な複合経済に対抗するため1つの産業に特化する必要がある」と述べた。また、ホスピタリティ・ワーカーや企業、コンベンションや出張など、他の種類の観光市場が多様化する可能性はあり「特にハワイを拠点とし、中国やブラジルを行き来する企業や産業に焦点を当てるべきだ」と語った。
写真:Theodore Trimmer _ Shutterstock.com
(日刊サン 2021.04.13)
シェアする