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【ハワイニュース】ラニカイ・ピルボックス 人数制限を検討

カイルアの美しい海岸線が一望できる地点まで簡単に登ることができる、通称「ラニカイ・ピルボックス」で知られているカイワ・リッジ・トレイルに訪れる観光客の数は毎年増加しているが、その注目度が高くなるにつれて周辺住民にとって多くの問題が噴出していると、ホノルル・スター・アドバタイザーが伝えている。

周囲の住宅地には路上駐車の場所を探そうと観光客の車が周回し、住民は騒音や庭を横切るなどの不法侵入に悩まされている。

人の足で踏み固められたトレイルは侵食されて脆くなり、雨が降るたびに溶け出して海に向かって茶色の土砂の川となって流れていく。

侵食された急勾配の尾根では事故が多発し、救助ヘリコプターでの救出が毎週のように起こっている。

「このトレイルはすべての人々にとって非常に大きな問題となりました」と関係者が述べている。

トレイルを監督している州土地自然資源局(DLNR)ではこの状況の解決計画を検討しているという。

新しく発表された987ページにわたる環境アセスメント報告書では、トレイルの状況を改善させる計画とともに、許可・予約システムを導入してハイカーの数を制限するための運営計画が盛り込まれている。

トレイルの状況改善には、フェンスなどで立ち入り禁止区域を作り地表の保護や侵食対策を行うことが記載されている。

地域の自治会である「ラニカイ・アソシエーション」の会長であるトーマス・セステールさんは「今の状況を改善することなら私たちは全てを歓迎しますが、トレイルの状況が向上することで、さらに多くの観光客を呼び込むことになるのではないかと心配しています」と述べている。

観光客が押し寄せているラニカイ・ピルボックスだが、その歴史は意外に知られていない。

ピルボックスと呼ばれているのは、1マイル(およそ1.6キロ)ほどのハイキングコースの先にあるコンクリート製の箱型の建物のことで、壁面はペンキで綺麗に彩られている。

この建物は第2次世界大戦中に砲台を指揮するための命令センターの観測所として建設されたものだ。

ピルボックスに向かうトレイルは軍隊が軍事用機材を運ぶために作られた。

戦後、命令センターは必要なくなり、観測所とトレイルは民間に売却された。

その後、この歴史ある地区を住宅開発から守ろうとする地域住民と保護活動家が陳情を繰り返し、90年代初頭にこの地区はハワイ州の管理するトレイルとなったのだ。

セステールさんは「10年くらい前まではトレイルに登る人は少なく、10人から20人という感じでしたが、今では5分間で20人に達するほどです」と述べている。

カイルア・ラニカイ・ワイマナロ地区選出のリサ・マーティン州下院議員は「ラニカイ・ピルボックスは日の出を見るベストスポットとしてインスタグラムで一気に注目を集めました。そのために日の出前の暗いうちに観光客がトレイル入り口の住宅地に大挙してトレイルを登るようになりました。ハイカーたちは自ら暗い内から起き出すわけですが、周辺住民はまだ眠っている時間なのです」と述べている。

今回の環境アセスメントの報告書のために、コンサルタント会社「PBRハワイ・アンド・アソシエーツ」が住民に経験を聞いてまとめているが、問題は夜明け前の騒音だけでなく、フェンスを飛び越えたりする不法侵入、私有地での放尿行為、ドローンの騒音など、様々な問題が挙げられている。

トレイルの入り口近くのカエレプル・ドライブに建つブルーストーン・コンドミアムの住民が自主的にハイカーの数を数えたところ、週末やホリデーなどの多い時には1日に1,500人以上がトレイルに登って行った。

この数は日中のもので、20186月、日の出が549分だったある土曜日には、5時から545分までに登って行った観光客は116人いたという。

ハイカーは時々トイレや水道を利用するために、私有地であるコンドミアムの敷地内にフェンスを乗り越えて侵入してくることもある、と報告書に書かれている。

また、近くにあるミッド・パシフィック・カントリークラブでもハイカーが常にクラブの敷地内に侵入してくるという。

元ジェネラル・マネージャーのジム・スイーターさんは「毎日のようにトイレを使おうとクラブハウスに入って来たり、専用パーキングに車を駐車したり、入り口でタクシーを待ったりして、非常に迷惑を受けていました」と述べている。

クラブでは日本語と英語で標識を立て、侵入を防ぐためにセキュリティーが常に見張る必要があったという。

「私の意見ですが、トレイルの状況を改善することはラニカイにより多くの観光客を呼び寄せることになると思います。これ以上の打撃を与えないためにはトレイルを閉鎖すべきだと思います」

トレイルの表面の地層は侵食され、雨が降るたびに茶色の泥水が海に向かって流れ込んでいる。

最近の調査では海に流れ込む泥は沿岸海域に体積し、サンゴ礁にも被害が出るという。

また侵食されたトレイルは滑りやすくなり、ハイカーの怪我の原因となっている。

ホノルル消防署のデータではピルボックスでの救助活動のために出動する回数は激増している。

2001年から2012年までは1年間に4件を超えることはなかったが、それから徐々に増加して2017年には26件となっている。

DLNRでは調査の結果、トレイルにおける許容人数を1日に945人とし、今後許可・予約システムを導入して人数制限を行うことを検討しているという。

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写真: Shutterstock.com

 

(日刊サン 2022.3.14)

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