今、ハワイ沖の海にはたくさんのザトウクジラの母子がいる。ハワイ諸島ザトウクジラ国立海洋保護区の担当者のエド・ライマン氏は、クジラと船の衝突を避けるよう注意喚起を行っているとホノルル・スター・アドバタイザーが伝えている。
ボート側の安全のため、そしてクジラを保護するためにもこの季節の間はスピードを落とし、海での走行に十分な注意をするよう求めている。
先週の土曜日朝にはマウイ島の沖で、ボートと子クジラとの衝突事故が起こっている。
報告によると突然の出現による事故とされている。海中に血液が認められたためすぐに捜索隊が出動し、けがをしたと見られる子クジラを捜索したが発見できなかった。
ライマン氏によると、今季中すでに4件のクジラと船との衝突事故が報告されているが、これらは自己報告のみのため、実際にはまだ起こっている可能性がある。
1979年以来、147件の事故が確認されているという。
たとえ遅いスピードであったとしても、クジラとボートの衝突は両者にとって大きな打撃となる。
体重がおよそ45トンの成人ザトウクジラがボートと接触するのは、ゆっくり動いている貨物列車と車が衝突することに相当する。
以前起きた事故では、クジラのヒレが船の右舷にぶつかって船員の1人が海に投げ出された。
幸い船員は無事に救助されたが、最悪の事態となる可能性もあった事故だ。
以前、保護区内のマウイ島沖で負傷したメスのザトウクジラが目撃されており、その後の調査でクジラは船との衝突で背骨に重傷を負って尾を使って泳ぐことができない状態となっていたと推測されている。
それでもそのクジラは両方のヒレを使って泳いで生き延びていたが、昨年12月初旬以来目撃されておらず、すでに非常に栄養不良の状態だったためその後死亡したのではないかと見られている。
10月から3月まで、数千頭のザトウクジラがアラスカからハワイへやってきて繁殖活動、出産・子育てを行う。
ハワイ州法、連邦法共にクジラの保護を義務付けており、ハワイ法では、海上やドローンなどでは100ヤード以内、飛行手段では1,000フィート以内に近づくことは禁止されている。
クジラには優れた物体探知(ソナー)能力があるために船や人間を避けることができるという話が広く伝わっているが、これは大きな誤解であり、真実ではない。
関係者は「この素晴らしい動物と彼らの自然な行動」を離れたところから楽しんでもらいたいと述べている。
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写真:Shutterstock.com
(日刊サン 2023.2.1)