ウイスコンシンで独り言 人種差別
人種差別をよしと言うような人はいないでしょうが、人種差別の感じ方は人によりいろいろではないでしょうか? 自分の場合はウイスコンシンの町でアジア系の住民として住んでいますが、どこへ行っても特に他の人と違って扱われていると感じることはありません。
今住む町ではアジア系のお医者さんが何人かいるので、知らない人から「OX病院の先生ですか?」と聞かれることもあります。外見から多かれ少なかれアジア系=病院関係者などと勝手な先入観を持ってしまう人もいるようです。そのせいか、こちらに来てから一度アパート探しをしていた時に、予約してすぐに行って見ると「もう決まりました」と突然言われ、差別ではないかと思いましたが、それ以外の所で差別を感じたことはありません。
Timeの今週号(9月21日28日の合併号)の中でこんな記事がありました。あるインデアナポリスの黒人青年が5月末に起きた、ジョージ・フロイド氏を死亡させた警官の過剰警備に抗議して、6月に初めてストに参加したそうです。外出禁止になっている午後10時には帰宅しようと駐車場まで来た時に、大声で誰かが叫んだのを聞いたのですが、それが警察とは思わなかったようです。その結果、警察の指示に従わずに逃亡したと見なされ、逮捕されたのです。
まだこの青年への判決はでていませんが、有罪の場合は最高一年の懲役と罰金5,000ドルが課され、仮に無罪を勝ち得ても、裁判所には逮捕歴の汚点が残り、職探しや住宅探し、進学、技能資格免許の申請時などに不利になると書かれています。
またこの記事では、全米で警官の過剰警備に対して約2,300万人が参加し、ある地区のデモ参加者の人種構成は黒人17%、ヒスパニック22%、白人46%と白人が半数近く占め、他のデモの調査でも白人が54%とスト参加者の多数を占めているとあります。しかし逮捕者を見ると大多数が黒人で、シカゴでの5月下旬の逮捕者は黒人70%、白人10%とのこと。
こうしたことから、警察官がデモ参加者の中でも特に黒人に集中して逮捕する傾向があると言えます。それで一度逮捕歴ができると、就職、進学、住宅探し、資格申請などで不利益になり、差別がますます助長することになります。
よく言われることですが、白人であることで得られる特権をアメリカの白人本人は意識しない人が多いと言われています。もしあなたが警察官なら、スト参加者を無作為に偏見なしに逮捕するでしょうか? それとも黒人差別問題のストなので、黒人を中心に逮捕するでしょうか? ひょっとすると我々は無意識である人種に対して偏見を持っているのでしょうか? 警官がある人種に偏見を持っているかどうか、知りたいところです。
とどけMahalo! アメリカ本土便り No.85
大井貞二(おおいさだじ)
1988年にハワイに移住。地元の私立校で日本語を教える。その後、ハワイ大学大学院を経て、ハワイパシフック大学(HPU)にて世界中からやってくる学生に日本語を教え、最近退職。現在アメリカ本土に居住。