ウイスコンシンで独り言 おばさんの助言
大昔、僕がまだ十代だった頃、親友のお母さんから「お嫁さんは遠くの人もらっちゃダメ」と言われました。その頃、僕の住んでいた愛知県には九州方面からたくさん人が来るようになり、地元の人と知り合いになって結婚された人も多かったようです。そうした人たちは急に新しい遠い親類ができて、お付き合いなどで大変だったであろうと思われます。おばさんはその頃のいろんな人の話を聞いて、そういったことを強く感じていたようでした。
帰国もひと苦労
皮肉にもそのおばさんの助言を忘れたかのように、自分は日本人とは結婚せず、よりにもよってハワイに住み、今では日本からさらに離れた、アメリカ本土に住んでいます。引退して自由の身になり、頻繁に日本へ帰られるのですが、今の場所からではハワイに住んでいた時のようにはそう簡単には帰られません。ハワイでなら午後にゆっくり空港に出かけられ、飛行機に乗れば9時間ほどで日本に到着です。それも日本行きの便はいくつかあって選択もできます。そんな点でハワイに住む人達がうらやましい時があります。
今住む所から日本へ行く場合は真っ暗闇の早朝に家を出て、デトロイトかミネソタまで行かなくてはならず、冬だと便が欠航になるのではといつもひやひやです。そして飛行時間は直行便で14時間はたっぷりかかります。今は何とか早起きでき、長時間の飛行にも耐えていますが、だんだん難しくなるであろうと考えています。
便利だったハワイ
日本への道のりもですが、ホノルルは何でも近くて便利でした。領事館とか役所とか図書館や、電話電気会社、銀行などが職場から目と鼻の先だったので、散歩を兼ねて支払いなどに出かけていました。スーパーも近かったですねぇ。今自分が住む所ではどこへ行くにも10キロは離れているので、ちょっとした外出でも軽く二時間は過ぎてしまいます。ハワイを去る際にこのことは知ってはいたものの、ホノルルのその便利さを懐かしんでいます。
それでも何事も比較の問題で、ハワイだって日本のどこかに住むよりはかなり遠いです。家族に何かあった場合などそうおいそれとは帰ることはできません。でも、自分の今住むウイスコンシンに比べれば…って思います。
人というものは「住めば都」で、自分が住む所に愛着を持つべきかもしれませんが、自分はこのウィスコンシンに骨を埋める気持ちを持っていません。その気持ちは日本へ帰る度に強くなっています。日刊サンの読者の方々の気持ちや事情もいろいろでしょうが、家族が日本にいて、何かあった時においそれとは帰れませんね。自分の住むウイスコンシンではなおのことです。今頃になって、あのおばさんが語った、故郷を離れてどこか遠くに住むことの意味を思い起こしています。
とどけMahalo! アメリカ本土便り No.100
大井貞二(おおいさだじ)
1988年にハワイに移住。地元の私立校で日本語を教える。その後、ハワイ大学大学院を経て、ハワイパシフック大学(HPU)にて世界中からやってくる学生に日本語を教え、最近退職。現在アメリカ本土に居住。
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