お子さんがハワイの学校に通っている、自身がロミロミのなどの資格取得をめざしている…小中学校から大学、専門学校と、ハワイの教育機関は実に多彩。日刊サンではバイリンガル教育をはじめとする、“学び”の特集をしています。
The Father Effect、子どもの教育『お父さん効果』
お話しをしてくれたのは、ホノルルで“フォーカス教育研究所”を主宰する鵜飼高生(ウガイタカオ)さん。
今回のテーマは、子どもの教育の『お父さん効果』(Father Effect)について。
「日本では、小泉進次郎環境大臣が育休取得を宣言し、実際にミルク作りやオムツ替えなど従事している内容を語るなど、そのイクメンぶりが話題になっていますが、アメリカで父親が育児や子どもの教育に積極的に関わることはごく当たり前です」 と、鵜飼さん。
「日本では企業によって男女別に産休や育休の制度が決まっているようですが、アメリカはフレキシブルで好意的です。“子どもは社会で育てる”意識が高いように感じますね」
学校の保護者会や個人面談、PTAにも父親は積極的に関わっている。
「さまざまな学校行事は平日にあることも多いけれど、仕事を休んだり中抜けして、父親も学校行事には出席しています。それが当たり前だから、仕事場の仲間や上司も協力的ですよ」
そもそもアメリカでは、母親に任せっきりという感覚がない。父親にとって育児は“参加”するものではなく、“自分ごと”なのだ。
「私の“フォーカス教育研究所”にて面談する場合も、両親揃って、あるいは父親が中心になってということが多いです」
母親は情緒を育み、父親は知性を育む?!
教育のお父さん効果についてはさまざまな研究報告がある。たとえば、イギリス国立児童発達研究所が30年間に渡って行った、7歳・11歳・16歳の児童17,000名を対象にした追跡調査のデータを、英オックスフォード大学の研究チームが分析。
その結果、成長期に父親とよく交流する子どもは、
●非行に走らず学業成績が優秀
●人間関係が良好
●新しいことへの挑戦心・達成意欲が高い
という特徴が見られ、成人してからは、
●自身の能力を発揮する職業につき、結婚して幸せな家庭を築く
という傾向が強く見られたのだそう。
「母親限定の環境よりも、父親という違う視点や経験が増える、それは確実に子どもにとってプラスです。また、父親が育児や教育に熱心な家庭ほど、子どもの言語能力はよく発達しているように感じます。接触時間が少ない父親との会話は新鮮だからかもしれません。両親に限らず他の人とも躊躇せずに会話ができるようにもなります。つまり社会性が育まれやすい」
母親の方が距離が近いから、言わなくてもわかる、黙っていてもやってもらえる甘えがあるのか? 「そういう母親ならではの無条件の愛情も必要ですよね。たっぷり愛されると情緒が安定して感性も豊かになります」
その一方で、父親から個の人格を持つ存在として認めてもらっていることを感じることができたなら、自尊心も健やかに育つ。
「母親と父親で教育の役割分担をするというより、両親ともが子どもを尊重しながら育てることが大切。小さな頃から自分で考えて自立心を養うのがアメリカの親たちです」
子育てを楽しむことができる父親になろう
「またアメリカの男性は、家庭を大切にする伝統があります。会社より家庭、家族ファースト。男も女も小さな頃から家族の一員として協力して家事をやるし、妹や弟の面倒も見る。家庭人としてしっかり育てられているんです。だから大人になって自分の家庭を持ったら、家族を大切にするのは当たり前。家族と共にいること、子どもを育てることは、とても幸せなことだと感じることができる。育児や教育に関われるのは、父親にとって喜びなんだと思います」
子育てに積極的に関わるには、仕事の進め方や、自分の余暇時間管理など、父親にとって自分の生き方を考える良いきっかけになる。
「私もこれから0歳児の娘を育てる父親として、仕事と家庭の両立をバランスよくしていきたい。父親も母親も自分の人生を充実させて楽しんでいなければ、良い育児はできません。“育児は育自”でもあるんですね(笑)」
(取材・文 奥山夏実)
(日刊サン 2020.2.7)