アメリカの中でも特に高齢者の人口が多いハワイ。家族や親族の多いローカルの人たちは、「お年寄りは身内でサポートする」風習が今でも残っています。ところがハワイに移住してきた日系人の場合、親族がいなくて少子化の影響や「子ども世代は独立するとメインランドや日本で仕事をしている」など、高齢の夫婦だけや、パートナーを失った独り暮らしの方達が目立ちます。 家族が減っても日本に帰国せず、一生ハワイで暮らそうとしているなら、住まいのダウンサイズを検討してみてはいかがでしょうか。 そしてその先の、介護が必要になった場合の施設(シニアホーム)についても知っておくことが得策です。 今回の特集では、自宅をダウンサイズする場合に住宅費を安く抑えられるAffordablehousing/アフォーダブルハウジングについてと、介護や看護を受けられるシニアホームについてご紹介します。
シニアの生活をダウンサイズするなら、 低価格のアフォーダブルハウジングの検討を
たとえば昨年ワイキキに完成したアフォーダブルハウジング『アイナハウ・ビスタII』。
9階建てのこの低価格賃貸アパートは、スタジオ・タイプと1ベッドルームの間取りで、広さは377~420スクエア・フィート。全62戸で、月額賃貸価格は549~1,137ドルの安さです。
ハワイ州政府が提供するアフォーダブルハウジングは、ホノルルだけでも70棟以上あり、賃貸式も購入タイプもあります。現在もチャイナタウンの公有地に『ハレワイ・オル・シニア・レジデンス』が建設中で、今後も増える見込み。
その背景には、高級コンドミニアムの供給が一段落したものの、ローカル向けの住宅需要は常に高く、アフォーダブルハウジングを建設すれば州政府の支援もあるから。 ただしアフォーダブルハウジングには以下の条件があります。
入居条件
●アメリカシチズンおよびグリーンカード保持者
●プロパティにより55歳以上、62歳以上などの年齢制限
●ハワイ州在住者
●借りたユニットに居住すること
●世界中のどこにも借地物件や所有物件を所有していないこと
●年間収入が居住者シングルの場合は36,050〜54,850ドル以下。カップルの場合は41,200〜62,650ドル以下など。物件により異なる
●クレジットチェック、犯罪歴チェック 入居したい場合は申し込み書の提出、インタビュー、収入の確認、財産の確認などがあるので、詳しくは下記をご参照ください。
■senior housing net www.seniorhousingnet.com
■The Senior Care Guide www.theseniorcareguide.com
■Affordable Housing In Honolulu www.affordablehousingonline.com/housing-search/Hawaii/Honolulu
■senior housing net (Honolulu Low Income-Affordable) www.seniorhousingnet.com/seniorliving-search/honolulu_hi/low-income-senior-housing_type
介護や看護が必要になり、 ハワイでシニアホームに入居する場合
お話しをしてくださったのは、フルカワシニアケアのグレン・フルカワ代表 です。フルカワ氏自身、20年前に90歳代の祖父と、80歳代の祖母に介護が必要になり、ケアしてくれる人や施設を探しても見つからなかった体験が、シニアケアの仕事を始めるきっかけとなったそうです。
「親やパートナーにそろそろ介護が必要だと感じた時、介護認定を受けなければサービスは受けられません。アメリカで介護認定をするのは医師です。だからまずは、かかりつけのホームドクターかナースに連絡をします。入院している場合は、そこの担当医に相談するといいでしょう
認知症の疑いがある場合には、また老人医療専門のGeriatricsのドクターがいるので、ホームドクターかナースにGeriatricsを紹介してもらうとより正確な診断が得られます。
「医師は要介護度Level of careをさまざまな角度から診察します。レベルは ①要介護レベル/Care Home Level、②要看護レベル/Intermediate Care Facility(ICF)、③高度看護レベル/Skilled Nursing Facility(SNF) です」 介護や看護が必要と認定された場合、メディケアで費用の一部がカバーされることがあります。メディケアカンパニー、もしくは施設に問い合わせしてください。民間の長期介護保険に加入している人は申請します。 「急にストロークや心筋梗塞などで緊急入院し、介護や看護が必要になった場合、入院している病院が介護認定をした上で、退院計画プランナーをつけてくれます。プランナーは病院からの退院後、介護・看護計画をサポートし、シニアホームやナーシングホームを紹介したり、相談に乗ってくれます」
フルカワシニアケア
アフォーダブルハウジングの一例
高額になりがちな介護、 サギ被害も急増しているので注意を
レベル①の要介護の人なら、自宅で今までのように生活しながら、必要に応じて自宅にヘルパーを派遣してもらったり、ベーシックなデイケア施設に通って支援を受ける。
ヘルパー派遣は1時間25ドル平均。ちなみにフルカワシニアケアのデイケアは7am〜5pmまでで1日75ドル。日本語スタッフがいて、和食ランチなども提供される。
「レベル②の要看護レベルなら、自宅にナースを派遣してもらったり、ナースがいるアダルトデイヘルスケア施設での支援を受けたり、ナースのいる居住型ケアホームへの入居などを検討しましょう」
平均1日100ドル、ナースがいるハワイの平均的なケアホームは月5,000〜7,000ドルとのこと。
フルカワシニアケアのカネオヘとヌアヌにあるケアホームでもデイヘルスケアは1日100ドル。また出張やバケーションで家族が留守になるときには、泊まりで預かってくれるサービスもあるそう。ただしかなり早くからの予約が必要。 「③の高度看護レベルで、4時間の介護体制が必要、もしくは継続した看護体制が必要な場合は、フォスターケアホーム(月平均4,000〜5,000ドル)やナーシングホームへの入居を検討します」
24時間看護の場合月8,000〜10,000ドル、もしくはそれ以上かかる。 「シニアケアにはときに高額なお金がかかります。話しやすい内容ではありませんが、介護を受ける人の望みや資産をあらかじめ聞いておくことは大切です。高齢者が資産を狙われてサギ被害に遭うことも急増しています。金銭面の話し合いをするときには、会計士や弁護士などに仲介してもらうことをお勧めします。そのためにも、終活は元気なうちから早めに準備をしてください」
(取材・文 奥山夏実)
(日刊サン 2020.01.03)