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コラム とどけMahalo! アメリカ本土便り

ウイスコンシンで独り言  隣人との別れ

 ウイスコンシンへ引っ越し、今のコンドに住みだして5年ほどになります。コンドから近所の公園まで行って帰ってくる散歩が日課となりました。そしてこの散歩で何人かの人と顔見知りになりました。ジムさんもその一人で庭にいるのを見かけると手を振って挨拶したり、ちょっと立ち話をしていました。夏にはキュウリとかトマトのおすそ分けをしてもらったり、こちらもジムさんが好きなクッキーを上げたりしていました。

 ジムさんは心臓の手術を何度かしているようで、一度は首の血管から抽出したたくさんの黄色い脂肪を医者からみせてもらったと言っていました。ジムさんはベトナム戦争に従軍し負傷した傷痍軍人ですが、それは身体の負傷だけでなく、心的な後遺症もあったようです。それでかどうか、ジムさんの庭はマネキンやら恐竜、様々の動物の飾り物が配置され、夜は様々な色彩照明が施され近所の人達は「ジュラシックパーク」と呼んでいました。

 先日いつも開けっ放しのジムさんの車庫の扉が閉じられているのでおかしいと思っていたら、何とジムさんが急死していました。聞くところによると、ジムさんの家族が定期的に電話をしていたのですが、ある日曜の夜、電話をしても応答しません。ちょっと気にはしましたが、そういったことは過去にもシャワーを浴びていたとか、居眠りをして電話に出ないことはありました。ただ翌日電話しても出ないので娘さんが嫌な予感がして、40キロほど離れた自宅から駆け付けると、ジムさんはテレビの前であたかも居眠りをするように亡くなっていたそうです。テレビはついたまま、夜にのむ薬は残されていた所を見ると夕食前に息が絶えたのでしょうか?いずれにせよ、静かに眠るように息を引き取った様子だったようです。

 ほんの数日前までは庭先にいるジムさんと挨拶したばかりだったのに、そのジムさんが故人になっているとは信じがたいです。残されたお子さんたち遺族は庭に置かれた恐竜など家の整理で大変になると思われますが、こんな亡くなり方もいいなって思います。

 私の知っている人でも息を引き取る数時間前までは普通に生活していて、「ちょっと横になる」って寝て、静かに息を引き取っていたという人を数人知っています。この方々は皆80歳過ぎの方ばかりでした。

 長野県で1980年に推奨された「ピンコロリ運動」というものがあり、健康年齢を長くし、行く時はコロリと行くため、減塩運動と野菜を食べることを推奨しています。また「ピンコロリ」で行くための5つの習慣(運動、質のいい睡眠、朝食をとる、禁煙、程度の飲酒)をすすめています。ただジムさんは喫煙家で運動をせず、食事はいつも外食でした。健康にいいことをすべきですが、死んでいく運命は変わりません。あまり食事制限とか、節制などある年齢に達したらあまり気に過ぎることはないのかもしれません。多分ジムさんならそう言うような気がします。

とどけMahalo! アメリカ本土便り No.169

大井貞二(おおいさだじ)

1988年にハワイに移住。地元の私立校で日本語を教える。その後、ハワイ大学大学院を経て、ハワイパシフック大学(HPU)にて世界中からやってくる学生に日本語を教え、最近退職。現在アメリカ本土に居住。

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