4歳の子どもたち(総計186人)を殺風景な部屋に案内し、テーブルの上にマシュマロを置き、「このマシュマロを食べるの15分がまんしたら、もう1つあげるよ」とした場合、食べるかどうかを調べる実験がありました。それは1960年代後半から1970年代前半にスタンフォード大学の心理学者・ウォルター・ミシェル氏で、その結果じっと我慢して、目の前のマシュマロを食べないで、2個目を貰えた子どもは3分の1ほどでした。
そしてマシュマロを我慢できた子どものその後の追跡調査をすると、マシュマロを我慢できなかった子より大学進学適性試験(SAT)の点数が高いなど、学業でいい成績を収め、人生でも成功したと結論づけました。そのことから幼い頃に我慢できるかどうかがその後の人生で成功するかどうかの大きな要因と考えたのです。
我慢と裕福度の関係
ところが、最近似たような実験で実験対象を拡大した結果、そのマシュマロ実験は人格の一面しかとらえていないと主張する人が現れました。それは経済的に裕福な子どもならマシュマロをすぐ食べなくてもいいが、貧しい家庭ではそうした心の余裕がなく、子どもの自制心は経済的裕福度が左右するという主張です。
そう言われれば私が小さい時、裕福な家庭の子や、一人っ子はどちらかというと「おっとり」していて、あまり食べ物や遊び道具などでガツガツ、せかせかしなかったと思います。ですから、マシュマロ実験ではそうしたおっとりした子ども達はすぐ食べない可能性が高いのです。でも、兄弟の多い家庭や貧しい家庭の子どもは食べ物を見た時に食べないと、食べられないことがあります。そうしてみると、家庭の裕福度などがそうしたマシュマロをすぐ食べるかどうかを決定する要因になると思われます。
環境が人格を形成させるのか?
私は子どもの時には「がまん」の大切さを大人から教わりましたが、なかなか我慢することが身につきませんでした。私ならその実験ですぐにマシュマロを食べた部類に入ったと思うのです。それはひょっとすると、食べられる時に食べないといけないっていう事情が、生まれつきの性格より優先していた気もします。
大人になってからの我慢に関しては、私はお酒か賭け事では自制できるようになっていました。それは、子どもの時にたくさんの酒飲みが街中で悪態をついていたり、普段おとなしい人が恐ろしい形相になるのを見たことが関係していると思います。賭け事も同様で、近所のある一家が賭け事が原因で離散したのを目撃し、賭け事の怖さを知っています。
その当時、そうした堕落した人を情けない人達と思っていましたが、その時代に生まれ、夢がない時に人はどんな行動をしたのでしょうか? 私も酒飲みになったり、賭け事をするようになっていた可能性があります。その意味で私は生まれ育った環境がよかったってありがたく思っています。
とどけMahalo! アメリカ本土便り No.141
大井貞二(おおいさだじ)
1988年にハワイに移住。地元の私立校で日本語を教える。その後、ハワイ大学大学院を経て、ハワイパシフック大学(HPU)にて世界中からやってくる学生に日本語を教え、最近退職。現在アメリカ本土に居住。
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