私の住むウイスコンシンのグリーンベイという人口が10万人ちょっとの町にも日本食レストランが数軒あります。日本人が経営する鉄板焼きの店もありますが、たいていの日本食レストランは、経営者も働く人も日本人ではないことが多いです。そのようなお店に行くと、味付けや食べ物の盛り付けなど、ちょっと日本と違いを感じたりします。そんな違いに日本人は面白いと感じるのでしょうか?それともがっかりしたりするのでしょうか?
地元のスーパーのすし
最近、私たちの住む地域のスーパーでは、どこへ行ってもすしを作って売っています。ただすしと言っても日本人が考える握り寿司のような生魚を使ったものは少なく、野菜やチーズやカニカマボコやアボカド、タマゴなどを使い、マヨーネーズがいっぱいかかっています。
もし生魚を使った場合は値段が高くなり、その種類も少ないようです。こうしたスーパーのすしは最近ではご飯の炊き方がうまくなり、炊き過ぎでぐちゃぐちゃとか、まだご飯粒のしんが残っていることは少なくなりました。またすしが食べる際に形が崩れないよう、しっかり握られていることが多くなり、進歩の跡が見られます。
ある鉄板焼きレストラン
この町で長いこと営業している鉄板焼きレストランが数年前に支店を出したのですが、その支店が最近閉鎖されました。その理由はコロナ感染の影響と人手不足で人が集まらなかったからと聞いています。そして空いた店舗を受け継ぐ人のことが地元新聞に書かれていました。
その人はメキシコ人で、アメリカに移住して30年近くになり、カリフォルニアで最初に働き始めたレストランが日本食レストランでした。その後もずっと日本食レストランばかりで働き、今ではすし職人になったようです。そして2007年からウイスコンシンに移り住み、しばらくしてから日本食レストランを開店しようとしたのですが、どの銀行もお金を貸してくれませんでした。
さぞかし困り果て、意気消沈したことと思われますが、このメキシコ人夫婦は5年ほど節約に節約を重ね、兄弟、親戚の協力もあり、その鉄板焼きレストランだったテナントが空いていることを聞きつけ、開店の運びとなりました。
よくあることですが、メキシコ人は自分達メキシコ人仲間で全てを行うことが多いので、このレストランでも内装や台所の改築など自分達の仲間に頼み、開業資金を節約したものと思われます。
メキシコ人が握るすし。店内はどんな音楽がかかるのでしょうか?このレストランでは日本食が中心ですが、メキシコ料理もメニューにいれて提供するようです。アメリカ本土ではいろんな人種の人がすしを握っています。このメキシコ人の握るすしはどんな味がするのでしょうか?地元の銀行の資金援助もなく、長年の苦労が実りとうとう開業にこぎつけたこのお店、繁盛することを祈るばかりです。今度機会を見て応援に行ってみたいです。
とどけMahalo! アメリカ本土便り No.174
大井貞二(おおいさだじ)
1988年にハワイに移住。地元の私立校で日本語を教える。その後、ハワイ大学大学院を経て、ハワイパシフック大学(HPU)にて世界中からやってくる学生に日本語を教え、最近退職。現在アメリカ本土に居住。
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