『米軍、アフガニスタン撤退』のニュースを知り、デジャブかと思った。“ベトナム戦争”、“サイゴン陥落”のワードが頭をよぎり、同時に世界貿易センタービルに旅客機が衝突した20年前の映像が甦った。起きてはいけないことが起こった、これから世界はどうなるんだろうと子供心に凍りついたのを覚えている。
1981年。ベトナム戦争時、特殊部隊に属し名誉勲章まで授与された元軍人ランボーは、祖国アメリカの田舎町でかつての戦友を探す旅をしていた。メモに書かれた住所にたどり着き家族を見つけたものの、友人は戦地で浴びた化学兵器のせいで既に他界していたと知り、落胆する。その後、町を歩いていると巡回中の保安官の目に留まり、厄介者と決めつけられ半ば強制的に追い出されたことでトラブルになり、逮捕さてしまう。手荒な取り調べ受けるうちにベトナムで受けた拷問がフラッシュバックし、ランボーは反射的に保安官たちを叩きのめした挙句、逃走する―。
超有名アクションスター、シルベスタ・スタローンが“敵”を相手に、これでもかと大暴れして無双する爽快な内容だと思っていたら、とんでもない誤解だった。もちろん、銃火器の反動に耐えうる筋骨隆々の肉体で断崖絶壁から飛び降り、たったひとり、森林地帯で無数の警官に包囲されながら過酷なゲリラ戦を敢行する姿は他の追随を許さないほどかっこいい!が、これは紛れもなく、強烈な反戦メッセージが込められた作品なのだ…感情を表に出さない一見無敵な男が秘められた過去を語り、慟哭したラストシーンに涙が止まらなかった。劇中に無駄な説明やセリフが極力ない分、余計にランボーの訴えが胸に刺さるのだ。今もなお彼のように苦しんでいる帰還兵がいるのだという現実を、改めて突きつけられた。
ベトナム戦争からおよそ半世紀。技術が進歩して無人爆撃機が増えたとて、それを操作する人間と巻き添えになる市民はいるわけで心を病む人も死者もなくならず…対話で戦争を防げる未来は来るのだろうか。
●加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国~の旅する映画ラヴァー/9.11後の修学旅行時、仏様が付けているような巨大ピアスをした友人が搭乗前の金属探知機に引っかかっていたのを思い出しました。
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