地元まで開通していなかったので、いつか乗ってみたいと憧れていた新幹線。1964年の東京オリンピックに合わせて作られた世界初の高速鉄道―戦後復興のシンボルであり、フォルムもかっこいい。
殺し屋レディバグ(ブラッド・ピット)は、東京発京都行きの新幹線“ゆかり”に乗り、車内のとあるブリーフケースを盗んで次の停車駅で降りるだけという仕事の依頼を受ける。至極簡単な任務のはずが、なんとその新幹線には同じく殺し屋の兄弟レモンとタンジェリン、メキシコから復讐にやってきたウルフ、息子を襲った相手を探す木村など9人の殺し屋が乗り合わせていた。果たしてこれは、いつも運の悪さピカイチのレディバグのせいなのか。が、各々がこの状況には過去の因縁が絡んでいると気付き始め、その裏には“ホワイト・デス”という犯罪組織の存在があった。
和洋折衷のバランスが絶妙!海外から見る日本のイメージが少し香港ぽいのも“ブレードランナー”のサイバーパンク風で良し。かと思えばきちんと新宿のような雑多な景観が忠実に描かれ、さらに車内での殺し屋同士の戦闘中、何事もないかのように丁寧な接客で車内販売を行う乗務員や、他の海外観光客に「静かにしなさい!」と諭され、郷に入っては郷に従えの精神を守ってくれているシーンもあり、なんともシュールな笑いがこみ上げてきた。そして真田広之演じる元ヤクザの長老のセリフも、カルマ(業)やフェイト(運命)など仏教的な思想が織り交ぜられ、確かに日本原作のテイストが活かされていた。それに陽気でノリのいい愛すべきレディバグの軽快なアクション、殺し屋兄弟レモンとタンジェリンの掛け合いもテンポが良くて文句なし、まさに疾走感抜群の“弾丸列車”だ。
成人して初めて映画と同じルートの東海道新幹線に乗り、やっとだ、と感動していたら思っていたよりも遅い。どうやら新幹線の中でも各駅停車の“こだま”に乗ってしまったようで、しかしそれはそれで車窓から富士山が見えるかな、とのんびり景色を楽しめた。
●加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国~の旅する映画ラヴァー/チャニング・テイタムとサンドラ・ブロックも出演していて、あれ、この前観た“ザ ・ロストシティ”のメンバーそのまんまだ!と遊び心溢れていました。
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