“祖父殺しのパラドクス”―仮に過去に行って祖父を殺した場合、自分の親は生まれず、結果、自分も生まれない。では、存在しないはずの自分はなぜ過去に来られたのか?自分が存在しないなら祖父である人物を殺せないため、祖父は死なずに親が生まれ、自分もまた生まれるのでは、というタイムトラベルにまつわる興味深い矛盾を指す。
2022年の12月。高校で生物学の教師をしているダン・フォレスターは、幼い娘と妻と共にカタールで行われているサッカーワールドカップをテレビ観戦していた。するとフィールド上に突然、30年後の世界から来たという一団が現れ、今、人類はエイリアンとの戦争で滅亡しかけている、どうか未来に来て共に戦って欲しいと現代人に訴える。各地で混乱やデモが起こる中で徴兵が始まり、イラクに従軍経験のあるダンは、娘と未来のために参戦することを決意する。
90年代の古き善きハリウッド・SFアクション映画、ターミネーター2やアルマゲドン、インデペンデンス・デイといった大作を彷彿とさせ、頼もしいヒーロー、主人公ダンを演じたクリス・プラットがハマり役!全力で世界を救ってくれる、きっと大丈夫だという明るい希望と安心を久しぶりに感じた。時事問題、歴史、犯罪心理…複雑でヘヴィなテーマの作品も面白いが、はてあれはどういう意味だったろう、実はあの登場人物が怪しいのでは、といったややこやしい考察は要らず、手放しで大団円を満喫できる。エイリアンの造形も新鮮味があり、戦闘シーンはFPSゲームのような没入感でエンターテイメント性抜群。強いて難点をあげるなら、大好きなドラマ“24”でクロエを演じた女優の活躍をもっと増やして欲しかったくらいだろうか。
というわけで、タイムトラベルに付き物の悩ましい“祖父殺しのパラドクス”など気にしなくてよい。自分なりのパラドクスの解釈は、祖父を殺した時点で元いた世界には二度と戻れず、パラレルワールドに移動してしまうものと考えている。
●加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国~の旅する映画ラヴァー/涼を求めて来道される方、またオリンピックのマラソン競技もありますが、こんなに例外的な暑さだと申し訳ないです。
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