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デジタル版・新聞

コラム 来夏の映画観ようよ

シカゴ7裁判

 数年前、当時の総理大臣が地元に演説に来た際、批判的な野次を飛ばした男女が即座に警察に拘束され、また、政策への疑問を書いたプラカードを掲げていただけで女性が排除され問題になった。明らかに非武装の一般市民がこんな扱いを受けるなんて、太平洋戦時下かと困惑した記憶がある。

 

 キング牧師、ロバート・ケネディの暗殺が立て続けにおき、さらにべトナム戦争への反対運動が高まり混沌極まりない1968年の8月。次期大統領選を前にシカゴで民主党大会が開催される中、反ベトナム戦争派の若者たちが州をまたいで集い抗議運動をした結果、警察との衝突を招き大勢の負傷者を出してしまう。その暴動を煽ったとして、民主社会学生同盟や青年国際党、ブラックパンサー党など複数の団体の代表らが“共謀罪”で起訴されることになるが、その裁判は有罪ありきの理不尽にまみれたものだった―。

 

 もしあの場にいたら、軽く20回は法廷侮辱罪に問われたと思うほど判事にはプツンとキレた。毎度屁理屈をこね、事実を捏造し、こんなことがまかり通るのかと許容範囲を大幅に越えたのだ。特にブラックパンサー党のボビー・シールに発言をさせないように暴行を許可し、猿ぐつわまでさせる描写は信じがたいものだった。昨年警察官による拘束で亡くなったジョージ・フロイド氏と重なって見えて仕方ない。ただ、法廷が舞台であるもののお堅い雰囲気にはならず、終盤までテンポよく進む上、青年国際党のヒッピー2人の皮肉の効いた反抗的態度に幾度も笑わされた。ラブ&ピースを謳うだけでなく、確固たる反戦の信念を実行する姿は恰好がいい。あの時代に20代だったら間違いなく党員になっていただろう。

 

 日本ではオリンピックへ向けたテロ対策という名目で2017年から改正組織的犯罪処罰法が施行され、共謀罪の趣旨も含まれている。冒頭のような些細な抗議の声にさえ厳しいので、今後一般市民による大規模抗議デモが行なわれた場合どうなるか…問題提起された気分だった。

●加西 来夏 (かさい らいか)

映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国~の旅する映画ラヴァー/本作はゴールデングローブの脚本賞を受賞。アカデミー賞は逃しましたが、個人的には一押しの作品です。

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