“羊たちの沈黙”で、犯人像を予測するプロファイリングという言葉を知った。なぜ残忍な殺人をするのかと心理分析に興味を持ち、テッド・バンディやジェフリー・ダーマーら連続殺人犯について書籍を読み漁った経験がある。
麻薬や暴力のはびこる都市、ゴッサム・シティ。両親から莫大な遺産を継いだ青年ブルース・ウェインはマスクで正体を隠して犯罪者を処罰しており、市民の間でバットマンとして知られていた。ハロウィンの夜に市長が殺害され、リドラーと名乗る犯人は現場にバットマンへ向けた“なぞなぞ”を残す。さらに地方検事や市警本部長など次々と法の番人である人物を狙うが、果たしてその目的とは。
かつて前シリーズの“ダークナイト”、特に故ヒース・レジャーが演じたジョーカーの圧倒的存在感をベタ褒めしたが、本作では主人公バットマンが過去一番で魅力的!前回、表向きは華やかなプレイボーイで慈善家の顔を持つヒーローだったが、今回はそのような描写がなく、何よりマスクを脱いだ素顔が非常にダークなのだ。両親を失った過去のトラウマから陰鬱で苦悩に満ち、悪と戦うのも正義の為とはいえ私的な復讐が主な理由に見える。地道に犯罪撲滅を実行しているが、街は腐りゆく一方でなかなか努力が報われない…ここではたと既視感を覚えた。まるでジョーカーが警官に扮していた時の影のある表情だと。ヒーローの“闇”もとい“病み”を感じ、ヴィランのリドラーと重なって見えるほど危うい一面があり、葛藤を抱える人間らしさに共感を覚えた。また、劇中で使用されている曲が気怠く耽美で映画の雰囲気に良く合っているな、と思ったら大好きなニルヴァーナだった。退廃的、アンダーグラウンドな世界観が好きな人には堪らない上、サスペンス、ミステリー要素が濃い重厚な神作。
極端な承認欲求や歪んだ使命感―連続殺人犯の動機は多岐に渡り、幼少期に家庭に問題があった場合が多いという説も。それを踏まえて鑑賞すると、また違う風に物語が見えてくるかもしれない。
●加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国~の旅する映画ラヴァー/そういえばL.A.で初めて泊まったホテルが某連続殺人犯の常宿だったと後で知り、びっくり。近くに“セブン”のロケ地がありそこが目当てだったのですが…。
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