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デジタル版・新聞

コラム 来夏の映画観ようよ

【来夏の映画を観ようよ】ハウス・オブ・グッチ

 社会人になったらきちんとしたブランド腕時計をひとつ身に着けるべし、という日本の暗黙のビジネスマナーに則り購入したのがGUCCI。白い文字盤にシルバーの花が描かれ、エレガントかつシックでお気に入りだった。

 

 運送業を営む家族の元で働くパトリツィアは、あるパーティでたまたま老舗ファッションブランド GUCCI の創業者の孫マウリツィオと出会う。彼は家業には興味がなく、弁護士を志す朴訥な青年で純粋に彼女に恋をするものの、経営権を握る父ロドルフォに「財産目当ての女だ」と一蹴される。反対を押し切り結婚、子供も授かり幸せに思えたが、マウリツィオの叔父アルドやその息子パオロを含む一族間の確執を知ったパトリツィアは、それを巧みに利用して地位や財力を我がものにしようと画策し、やがて取り返しのつかない事態へと発展していく―。

 

 “アリー/スター誕生”で圧巻の演技を見せたレディ・ガガ、言わずと知れたアル・パチーノや実力派俳優達のキャスティングと知り、これは観なくては!と意気込み、それぞれ案の定の怪演で見事にGUCCI家の熾烈な人間模様に惹き込まれていった。謀略渦巻く様子は、まさに古代エジプト王朝やローマ帝国から続く権力をめぐる悲劇そのもの…そういえば、“スーサイド・スクワッド”でエキセントリックなジョーカーを演じたジャレッド・レトは誰役だったのだろう、と鑑賞後にチェックしなくてはわからないほど原型を留めぬ変身ぶりにも脱帽。あくまで実話を基にした作品であり当の本人達の真意を知る術は無いが、パトリツィアがもっと控え目に夫を立てつつマネジメントをしていたら、案外GUCCI家は上手く行っていたのかもしれない、と思ってしまった。

 

 時代は変わり、今や多くの社会人が腕時計を持たずスマートフォンで時間を確認するのが主流となった。ファッションの流行しかり、全ては時の流れとともに変わっていくものだが、あの思い出の腕時計のようにクラシカルさを残したGUCCIであって欲しい。

●加西 来夏 (かさい らいか)

映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国~の旅する映画ラヴァー/初めてプレゼントされ嬉しかったペアリング(GUCCI)が知らぬ間に質屋に出されていた事があり…人生色々なことが起きますよね。

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