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デジタル版・新聞

コラム 旅は呼んでいる 加西来夏

ロシア ~モスクワ、サンクトペテルブルク②〜

夜のクレムリン

以前、根室を訪れた後の事。北方領土の国後島からロシア人男性がひとりで泳いで根室管内に上陸、亡命を希望し話題になった。

 

距離的には韓国よりも近く感じるロシア。映画でも馴染み深く、有名なのがトム・クルーズ主演“ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル”で派手に爆破され、マット・デイモン主演“ボーン・スプレマシー”では付近でカーチェイスが行われたクレムリンを含む赤の広場。夜はその全景がライトアップされ、モスクワ川に反射する光も相まって美しいので、日中はレーニンの遺体が保存されている霊廟や、カラフルな屋根が珍しい聖ワシリイ大聖堂を鑑賞する日程がおすすめ。

プロパガンダポスター

また、旧ソ連側から第二次世界大戦を見るという、日本人の立場ではなかなか難しい経験ができるモスクワ中央軍事博物館。ナチス兵から奪い取ったであろう、山のように積まれた鉤十字バッジ、ドイツを狼に見立て、イギリス、アメリカと共にやっつけよう!というプロパガンダポスター。さらに、外の敷地には所狭しと近代のミグ戦闘機、軍用ヘリ、ミサイル、戦車とずらっと並び圧巻だった。

エルミタージュの金の孔雀

元々女帝エカテリーナ2世の皇居であったサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館は、ヴェルサイユ宮殿で見た“鏡の間”をさらに増してきんきらきんにした、悪く言うと成金趣味風だが突き抜けてゴージャス極まりない。最近ロシア産のスパークリングワインだけが“シャンパン”だとする法律が制定されたこともあり、かねてからフランスを意識していたのがうかがえる。ダ・ヴィンチ、ラファエロ、カラヴァッジオと大御所の絵画に加え、女帝の愛人からプレゼントされた“孔雀の時計”はこれまた全体がゴールドで、なるほど、愛人だけに相手の趣味をよく理解していたのが伝わる逸品だった。

 

ややこやしいことに、件の男性は日本側からすれば所有地の国後島から来たので彼は国内移動をしただけとなり、サハリンに送還された。外交問題に発展しなくて良かったが、お咎め無しを祈るばかりである。

●加西 来夏 (かさい らいか)

訪問39ヵ国、好きな言葉は「世界は驚きと奇跡に満ちている」/海外に行くとその国のシンボリックなマグネットとキーホルダーを収集する癖があるのですが、根室では「日本では当店のみ!直輸入プーチン大統領マグネット」が売られていました。既に持っていたのと同じものだったので買いませんでした…。


(日刊サン 2021.09.24)

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