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コラム マスコミ系働き女子のひとりごと

【竹下聖のラグビーコラム】雨中の激突、100周年のラグビー早慶戦

1123日は日本では「勤労感謝の日」ですが、ラグビー界では戦前から続く伝統の一戦の日。大正11年(1922年)に始まった早稲田大-慶応大のラグビー早慶戦が、今年100周年を迎えました。

1年で1番の晴天の日が

太平洋戦争中の3年間をのぞき、毎年1123日に綿々と歴史が受け継がれてきた定期戦。「当時の早大のマネージャーが気象庁に確認し1年で1番晴天が多い日」のため、この日が選ばれたと逸話が残りますが、今年の早慶戦は雨、それもあいにくの大雨。12月後半の寒さの中、私は屋根のある記者席でなく、OGの一人としてスタンドから記念の試合を見守りました。

「荒ぶる」を誓う早稲田

早慶戦は秋のリーグ戦である関東大学対抗戦の1試合の位置づけで、その時点で2位早大に対し慶大は4位。雨中の試合はキック合戦となり、前半は慶大が先制トライなどを決め10-0とリードします。早大の吉村副将が「前半は慶応さんのプレッシャーで自分たちの時間を過ごせなかった」と振りかえる苦しい展開も、後半はFW陣がおしくら饅頭のようなモールでゴールラインを突破し、トライ。スクラムで背中から湯気が立ち上る悪天候の中、実力でまさる早大が追加点をあげ、1913で逆転勝利。80分の熱戦に立ち合った1万人の観客の前で、赤黒ジャージの早稲田が勝利の雄叫び。吉村副将は「僕たちの目標は『荒ぶる(日本一でのみ歌う部歌)』を歌うこと。強いワセダを見せられるよう日々努力していきたいです」と力強く宣言しました。

ラグビーの早慶戦は早大が11連勝中

ラグビーのルーツは慶応大

現在のラグビー界は、数年前に大学選手権9連覇を達成した帝京大や、124日に35000人を集めて国立競技場で早明戦を行った明治大や早大が、日本代表に選手を数多く輩出するいわば「本流」。ただ、日本で最古のラグビー部は実は慶大。慶大蹴球部(ラグビー部)は1903年(明治36年)創立で、明治時代に横浜に居留した外国人とラグビーの試合で交流しました。黒と黄色の慶応ジャージは今でもルーツ校として尊敬を集めます。

戦前から「ラグビー」は冬の季語

早大の蹴球部は慶応に遅れること15年、1918年(大正7年)に発足。最近読んだ「戦時下のノーサイド」(早坂隆著・さくら舎)は、大正から戦前を生きた大学ラガーマンの歴史をつづった本ですが、戦前の日本のラグビー熱は思いのほか高かった様子で、同著では1930(昭和3年)発行の「俳句歳時記」に「ラグビー」が冬の季語として収録されたと紹介されていました。

・スクラムを組む肩と肩音立てて

・スタンドの翳ラグビーの半ばは翳

当時の人気俳人の山口誓子は1933年(昭和8年)にこんな句も発表しており、市民生活にラグビーが浸透していたことがうかがえます。

余談ですが1940年(昭和16年)127日には早明戦が行われ、早大が勝利。それから数時間後の翌8日の未明に、日本がハワイの真珠湾を奇襲し歴史が大きく動きますが、戦争突入の直前にも穏やかな学生生活があったことを思うと、胸が締め付けられます。早慶戦は1942年(同18年)の1123日に空襲警報が鳴り6日間延期されたのを最後に中断。学生ラガーマンたちは学業半ばにして戦場に向かいました。

世紀をまたぎ次の100年へ

歴代の選手たちが伝統を紡いできた早慶戦も今年で100周年。現役の選手たちはみな2000年以降の生まれでした。伝統の試合が世紀を超えて続いた奇跡に思いをはせ、ラグビーの魅力をまた噛み締めました。

降り止まない雨の中、宿敵のライバルの早稲田と慶慶が気迫のプレー

東京・大手町発 マスコミ系働き女子のひとりごと Vol.53

(日刊サン 2022.12.9)

竹下聖(たけしたひじり)

東京生まれ。大学卒業後、東京の某新聞社でスポーツ記者、広告営業として15年間勤務後、2012年〜2014年末まで約3年間ハワイに滞在。帰国後は2016年より、大手町のマスコミ系企業に勤務。趣味はヨガと銭湯巡り。夫と中学生の娘、トイプードルと都内在住。

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