ラグビーの国内リーグ「リーグワン」は、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(クボタ)が、絶対王者の埼玉ワイルドナイツ(パナソニック)を退け、優勝の栄冠を手にしました。決勝は5月20日に国立競技場で開催。リーグ史上最多の4万1794人の観客が、世界各国の選手が融合する“グローバル軍団”東京ベイの初優勝に酔いしれました。
歴史が動いた初優勝
創部45年目の悲願の優勝! 控えめに言って、日本のラグビー界で決して伝統チームでも、スター選手揃いでもない、いぶし銀の東京ベイが、初めて進んだ決勝の舞台で堅実な闘いぶりで勝利しました。
下馬評の高かった、対する埼玉は日本代表11人を擁し、前身のトップリーグ時代から3連覇を狙う国内最強クラブ。前半は東京ベイが9―3とロースコアのリードで折り返します。試合が動いたのは日本代表の“ラスボス”こと、埼玉のHO(フッカー)堀江の投入直後。後半中盤で立て続けに埼玉が2トライを決めて一挙に逆転しました。
ただ後半29分、東京ベイ主将のCTB(センター)立川のキックパスを、24歳のWTB(ウイング)木田がつないで、ライン際に飛び込み逆転のトライ。そのまま17―15で歴史的優勝を手繰り寄せました。
優勝は全員の信頼の結果
2016年からチームを指揮する南アフリカ出身の名将ルディケ監督は「いままで決勝には出られなかったですが、成長し続けてきたことが大事。全員を信頼していましたし、また全員に信念があったからこそ、今日こうやって優勝できたと思います」。温厚な紳士が、静かに喜びを口にしました。
世界の選手が織りなすチームカラー
トラクターなどの重機を製造するクボタの社内ラグビー部として創設され、リーグワン発足後は練習場がある千葉・船橋市や、近隣の市川市、東京・江戸川区など東京湾岸をホームとする東京ベイ。南アフリカやオーストラリア、ニュージーランド、トンガなどラグビー強豪国から選手が集まり、チームカラーを織りなします。
「オープンドア・ポリシー」で時代反映
この日も先発したHOマルコム・マークスは、南アフリカ代表キャップ57で、日本開催の2019年のW杯の優勝戦士の一人です。他にも司令塔のSO(スタンドオフ)フォーリーは、オーストラリア代表(キャップ75)、CTBクロッティはオールブラックスで長年活躍し、世界最高峰の舞台を知る男たちが、在籍。ただ、リーグの規定で各国代表歴のある選手の同時起用は3人まで。決勝トライを生んだ木田は、立命館大卒2年目のルーキー。ルディケ監督が掲げる「オープンドア・ポリシー」のもと、様々なバックグランドの選手たちが、仲間をリスペクトし、対話を重視し闘いました。優勝の瞬間、鮮やかなオレンジ色のジャージの大男たちが、指を天に突き差し、歓喜する姿は今の時代の象徴のように映りました。
さぁ、代表合宿もスタート
さぁリーグワン決勝を終え、9月開幕のラグビーW杯フランス大会に向けた、日本代表46人が発表されました。国内合宿を経て、最終候補33人へのサバイバルが始まります。東京ベイの初優勝で、歴史に穴があいたリーグワン。桜のジャージを誰が手にするかに注目は移ります。
東京・大手町発 マスコミ系働き女子のひとりごと Vol.58
(日刊サン 2023.6.9)
竹下聖(たけしたひじり)
東京生まれ。大学卒業後、東京の某新聞社でスポーツ記者、広告営業として15年間勤務後、2012年〜2014年末まで約3年間ハワイに滞在。帰国後は2016年より、大手町のマスコミ系企業に勤務。趣味はヨガと銭湯巡り。夫と中学生の娘、トイプードルと都内在住。
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