毎月第2週の週末号で連載中の本コラム、これまで「ラグビーにまつわるアレコレ」をお届けしてきましたが、ここ2カ月はお休みを頂いていました。実は「キャリアコンサルタント」の資格試験に挑戦すべく…勉強中でした。
キャリアコンサルタントとは?
2016年に国家資格となった「キャリアコンサルタント」とは日本ではまだ新しい職業です。個人の職業選びやキャリアの築き方などの悩みに寄り添い、助言を行い、企業の人事制度などにも携わる仕事で、国は2024年までに10万人のキャリアコンサルタントを養成する計画です。人生100年時代を迎え就労期間が長くなったこと、産業構造の変化で終身雇用が崩れ、職種や働き方の変更を余儀なくされる人が増えたこと…理由は様々ですが、今の時代に求められている資格だと言えそうです。
発祥の地はアメリカ
米国ではキャリアカウンセリングの歴史は日本よりずっと古く、1900年代初頭のシカゴで誕生したとか。移民や戦争からの復員兵の社会復帰など日本よりずっと複雑な社会を背景に、様々なカウンセリング手法やキャリア理論が米国で誕生しています。試験に向けてひたすら理論も暗記しましたが、著名なキャリア理論家のドナルド・スーパーは、今から100年以上前のホノルル出身。人生には6つの役割、つまり子、学生、職業人、市民、家庭人、余暇人があり、人生の中で果たす役割の変化を「キャリア・レインボー」と名付けました。試験に必須の理論で、ハワイの虹を想像しながら、錆びついた頭に叩き込みました。
アスリートのキャリア支援
さてスポーツ選手はどんな一流選手も、必ず人生の半ばで現役引退の時を迎えます。第2の人生で指導者やスタッフとしてチームに残れる選手は幸運なひと握り。スーツを着て一から違う職業に進む元選手も記者として数多く見てきました。昨年秋から興味本位でキャリアコンサルタントの養成講座に通ううち、この資格を使いアスリートのキャリア支援への道があることも知りました。
引退後にどう輝くか?
日本のスポーツ庁も室伏広治長官(砲丸投げの元五輪代表)のもと、国を挙げて選手のキャリア支援に着手しています。先月には室伏長官や元プロ野球選手会長の古田敦也氏、競泳の元五輪代表の松田丈志氏らを迎えたアスリートのキャリア支援を考えるシンポジウムにも参加し、国の熱意も感じました。今ではテレビの世界でも活躍する松田氏は、地元・宮崎時代から二人三脚で指導を受けた女性コーチに「水泳が人生の全てじゃないぞ。その後の人生でいかに輝けるかが人間としての勝負だぞ」と現役時代から言われ続けたと語りました。
ラグビー選手も現役生活が比較的短く、また野球やサッカーと比べてプロ化への道もまだ途上で、セカンドキャリアの作り方が難しい競技です。試験の合格発表はまだ少し先ですが、取材対象のアスリートを私自身がより深く探れる、そんな機会となる勉強でした。
“ラグビーブーム”の立役者となった元日本代表の五郎丸歩氏。現在はリーグワン静岡(元ヤマハ)のCRO(クラブ・リレーション・オフィサー)として経営面からチームを支えます。今春は早大大学院の卒業が話題に。
必死の勉強の跡が残る“キャリコン”の参考書。学科試験と15分のカウンセリングを行う15分の実技のテストがありました。
東京・大手町発 マスコミ系働き女子のひとりごと Vol.56
(日刊サン 2023.4.7)
竹下聖(たけしたひじり)
東京生まれ。大学卒業後、東京の某新聞社でスポーツ記者、広告営業として15年間勤務後、2012年〜2014年末まで約3年間ハワイに滞在。帰国後は2016年より、大手町のマスコミ系企業に勤務。趣味はヨガと銭湯巡り。夫と中学生の娘、トイプードルと都内在住。
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