【竹下聖のラグビーコラム】新年号特別編:古くて新しい?! 令和流「ケイリン」の楽しみ方
全国に43場も!あり、名前は知っていても、実際に足を運んだり、レースを見たことがないのが競輪かもしれません。今年7月のパリ五輪の自転車競技には、競輪界から男女のエース選手も出場予定。昭和の香り漂いどこか懐かしい「競輪」を、今年は体感してみませんか?
レースに人生をかける選手たち
天を見上げたり、太ももを叩いたり。スタートの儀式が終わり、選手たちが静まり返る瞬間がたまりません。時速70キロ近くで車体をぶつけ、時には激しく落車する危険と隣合わせの数分に人生をかけ、ゴールを目指す。そんなレースが全国の競輪場で日々繰り広げられています。
危険、汚い、そして暗い?平均的な日本の女子には縁遠い競輪ですが、私の場合はひょんなことから仕事を通じて昨年競輪場にデビュー。今は推し選手の車券をネットで投票する程度に、マイルドに楽しんでいます。
お気に入りの神聖な場所
北は北海道の函館から、南は熊本(地震で倒壊し、今夏再開予定)まで国内に43ある競輪場。誕生の歴史は古く、焼け野原になった戦後日本で、復興資金を調達するために始まりました。今は男女約2400人の選手が活躍し、ガールズケイリンも昨年は設立10周年を迎えました。
施行者は全国の都道府県や市町村などの自治体ですが、珍しいのは唯一村営で新潟県弥彦村にある「弥彦競輪」です。上越新幹線の燕三条駅からローカル線に乗り換えて約30分。万葉集にも歌われる由緒ある弥彦神社の境内の中にあり、カント(走路)は参道の杉並木に面しています。
ネットなら通販感覚でお手軽に
私がここを訪れたのは昨年の初夏。競輪場に吹く風は心地よく、神社の隣にあるせいかレースも厳粛な雰囲気に包まれます。平日の開催だと1日の入場者が100人に満たない日もあるのんびりした場ですが、令和の時代の公営ギャンブルはスマホが必須。他の公営ギャンブル同様、今や売り上げの大部分をネット販売が占めており、公式サイトや民間サイトから通販感覚で車券が買えるのです。全国の愛好者が100円から購入できる車券が、小さな町の財政を支えているのも一つの事実です。
お国柄も豊か 旅行感覚で
他に訪れたのは函館競輪で、空港からほど近く、冬場はスケート場に変身するとか。青森競輪は温泉施設が隣接でした。都内に2か所ある競輪場の一つの京王閣競輪は、京王線「京王多摩川」の駅の目の前で都心からも交通便利。他にも瀬戸内海に面した玉野競輪(岡山)と小松島競輪(徳島)、温泉どころの別府競輪(大分)や、古墳の近くの向日町競輪(京都)と、お国柄が豊かで、旅先で少し足を伸ばし寄ってみたくなる競輪場も点在します。
悲願は五輪の金メダル
そして競輪のもう一つの魅力は、選手がアスリートとしても活躍できることです。カタカナの「ケイリン」は、五輪の公式種目となっており、本業の「競輪」と自転車競技の「ケイリン」の二刀流で世界を目指す選手もいます。
柔道などと同様、日本発祥の「ケイリン」ですが、実は日本人が金メダルをとったことがなく、メダル獲得は悲願です。昨年8月の世界選手権や9月のアジア大会でも日本選手のメダルラッシュが続いており、パリ五輪の表彰台へ、期待は高まります。
1日の中でワクワクの時間を
百戦錬磨の玄人選手や、ジャニーズ風のイケメン、公務員から転身した異色キャリアの選手など、お気に入り選手の出場レースを追いかけ、まずは100円の車券を購入。レースの結果は、好きなときに公式サイトのダイジェスト動画で手軽にチェックできます。あなたの日々の中に、ワクワクする一瞬がきっと誕生するはずです!
競輪とは
戦後の1948年に始まり、2022年度の売り上げは約1兆円。主に9人で1周400メートルのバンクを走り順位を競う。毎年12月30日に行われる最高峰のGP(グランプリ)を筆頭に、GI、GⅡ、GⅢ、FI、FⅡの6ランクの大会がある。五輪では2000年のシドニー五輪から「ケイリン」が正式種目。初心者には選手の素顔を紹介するJKAの公式サイト「ケイリンマルシェ」がおすすめ。
東京・大手町発 マスコミ系働き女子のひとりごと Vol.65
(日刊サン 2024.1.1)
竹下聖(たけしたひじり)
東京生まれ。大学卒業後、東京の某新聞社でスポーツ記者、広告営業として15年間勤務後、2012年〜2014年末まで約3年間ハワイに滞在。帰国後は2016年より、大手町のマスコミ系企業に勤務。趣味はヨガと銭湯巡り。夫と中学生の娘、トイプードルと都内在住。
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