小生の小学生だった頃は、「鉛筆入れ」と「定規」は必須の持ち物でした。特に定規は長さを測るだけではなく、時には「チャンバラのカタナ」にもなりました。最近の子供達の持ち物は?と気になっていたところ、興味深いものを発見しました。それが、コクヨの「本当の定規」なのです。
これまでの定規は、目盛りとしてミリやセンチの間隔で、「線」が刻まれています。しかしこの目盛りの線の太さにより、測定誤差が出ていたのです。「線の太さ」の真ん中がその長さを示しているのか、それとも「線」に触れていればその長さなのか、また「線の太さ」の中での割合を勘案して、プラスマイナスの詳細計算をするのか? などです。細い線だとそれらの問題は生じませんが、読みにくさが出てきます。誰しもが疑問に思っていながら見過ごされてきました。そこで出たのが、「面の境界線」による測定の仕組みを採用した「本当の定規」という訳です。
従来型の定規はステンレス製が多く、目盛を示す線の幅が0.1~0.2ミリあるのだそうです。つまり、この目盛り線にかかっている場合、この線の幅のどこにあるかによって、長さの解釈は変わり測定誤差が出るのです。目盛りの「線」が0.2ミリ幅で正確に50ミリを真ん中として印刷されているとして、実際には50ミリの長さの物体が、49.9~50.1ミリの幅内として読み取られるのです。簡単にいうと、50ミリピッタリの長さの部品が欲しいが、50ミリを超えて長過ぎるのか、50ミリに足らず短いのかが、正確には判別できません。
一方、今回の定規の目盛りは等間隔に並べ、黒く塗られた「黒面」と、面の境界を示す「角状線」からできています。これで例えば50ミリ程の長さの物体を測定する時、境界面を超えているかどうかは瞬時に判断できます。つまり、「49ミリ超えで50ミリ未満」か「50ミリ超えで51ミリ未満」かが直ぐに見取れます。次に、隣り合う2本の「角状線(49ミリと50ミリの極細線)」もしくは(50ミリと51ミリの極細線))を見比べ、物体の端が2本線(幅は1ミリ)の間でどの位の位置にあるかを、目分量で測定します。よって測定結果は、「50ミリの長さの部品が欲しいのだが、実際の物は短くて、大体49.7~49.8ミリくらいだな」となるのです。1ミリ以下の目分量の判断は個人の経験により差が出ますが、「50ミリを超えているのかいないのか」さえ間違いそうな従来型の目盛りよりも、より正確であると言えます。
線の間隔だけでなく、面の境界の間隔を使うという発想は、画期的と言えるでしょう。なぜなら、何百年を超える測定技術を改善したのですから。15センチ定規で価格は千円(税別)。30センチ、50センチの定規も出てくるかも知れませんが、長くなればなるほどミリ単位の精度は求められなくなるので、この長さならではの「技」かもしれません。
No.300
となりのおじさん
在米35年。生活に密着した科学技術の最新応用に興味を持つ。コラムへのコメントは、 [email protected]まで
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