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【ちょっと役立つ 日本の新製品】スーパー繊維“アラミド”で橋を建設
今回は、「アラミド繊維」と呼ばれる人造の「スーパー繊維」を取り上げます。基本的には、ナイロンなどと同様のポリアミド・ポリマーで、いわゆる人造の化学繊維です。ナイロンは脂肪族ポリアミドですが、アラミド繊維は芳香族ポリアミドです。
「スーパー繊維」は、普通の衣料品などに使われている繊維よりも、強度・弾性率・耐熱性・難燃性などが極めて高い繊維のことです。代表的な種類としては、アラミド繊維、ポリアリレート、炭素繊維、アルミナ繊維などがあります。アラミド繊維の商品としてはケプラー、テクノーラ、トワロンなどのパラアラミド繊維と、ノーメックス、テイジンコネックスなどのメタアラミド繊維があります。分子構造の違いによって分類されています。
メタアラミド繊維は耐熱性が高く、400℃超でも溶けたり分解しません。空気中では燃えない素材で、毒性の燃焼ガスなども出しません。近年、防火服やバグフィルター、電気系統の絶縁財、IT機器のクリーナーなどに使われています。パラアラミド繊維は強靭で、鋼材と比較すると、同じ容積で重量は約1/5であるにも関わらず、引っ張り強度は約7倍あります。
一般の物体では力を掛け続けると、時間経過と共に歪みが増大するという「クリープ現象」が起きますが、このパラアラミド繊維ではほとんど起きません。加えて耐切創性(切り傷に強い)があり、非導電・非磁性(電気を通さず、磁化しない)で、電波透過性もあります。電波を通すので、スマホのケースはほぼこれでできています。また、警察の防弾・防刃ベスト、ヘルメット、ラジアルタイヤのタイヤコード、宇宙航空分野で広く使われています。
この分野ではテイジンが国内の先端を担っています。アラミド繊維の軽くて強靭な性質と、錆びない、対薬品性、耐水性、耐熱性、衝撃吸収性などにより、海中ケーブル、光ファイバーのテンション・メンバーなどに有効利用されています。
さて今回のポイントは、このようなアラミド繊維を、従来では鉄鋼材が使われていた「橋梁建築」に世界で初めて使ったということなのです。徳島県の「別埜谷(べっそだに)橋」という27メートル程の橋で、鉄鋼の替わりに、腐食しないアラミド繊維を使ったのです。軽量で引っ張り強度が大きく、しかも錆びないことは、長期の維持管理費の大きな削減になります。コンクリートを補強する鉄筋は、塩分を多量に含んだ風により腐食します。錆びるとコンクリート片の剥落を引き起こし、橋の崩壊につながります。現在大きな橋梁の多くは、維持管理が困難な状況になっています。この橋は、十分な準備を得た上での建築で、約7億7千万円で完成したそうです。
完成(2021年度)以後、建設関係者の視察が相次いでいるそうで、腐食を引き起こす塩害や凍結防止剤の散布が多くある場所での導入が増えそうです。地元では「防弾チョッキの橋」との愛称も出来たとか。
No.324
となりのおじさん
在米35年。生活に密着した科学技術の最新応用に興味を持つ。コラムへのコメントは、 [email protected]まで
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